内閣府の組織見直し論が政府・自民党で起こっている。内閣府は「首相直轄の政策実施機関」として、2001年の中央省庁再編で発足したが、次第に担当業務が膨らみ、設置当初の趣旨とかけ離れた存在になりつつあるためだ。
ただ、内閣府の業務を省庁に「移譲」することは、改めて省庁を再編する一大事業になる可能性もあり、簡単には進みそうもない。
担当する閣僚は9人、副大臣6人、政務官7人
内閣府は旧総理府、旧経済企画庁、旧沖縄開発庁の3府庁を統合し、旧総務庁、旧科学技術庁、旧国土庁の一部業務も加えた巨大官庁。その任務は「重要政策に関する内閣の事務を助ける」「首相が管理することがふさわしい行政事務の円滑な遂行を図る」(内閣府設置法)と定められている。要は、複数の省庁にまたがる重要政策の企画・立案と総合調整ということ。このため、そもそも多くの課題を次々に抱え込む傾向がある。
実際、経済財政諮問会議の運営から宇宙、防災、沖縄振興、北方領土問題、消費者問題、少子高齢化対策、犯罪被害者対策、自殺対策、アルコール健康障害対策、栄典、NPO(非営利組織)まで所管政策は多岐にわたり、それらを担当する閣僚は9人、副大臣6人、政務官7人にのぼる。最近でも、新藤義孝総務相に、兼務の地方分権改革担当相に加え国家戦略特区担当相の肩書もついているといった具合。内閣府の組織改廃は行われていないが、政権が代わるたび、「目玉政策」として次々に追加されてきたということだ。
内閣府が各省庁の「隠れみの」になっているとの指摘もある。例えば原子力損害賠償支援機構を管轄する「同機構担当室」は内閣府に置かれた組織だが、実際の部屋は経済産業省内にあり、職員の大半も経産官僚。「政治的配慮から、各省庁が直接所管しにくい業務もある」(政府関係者)との声も聞かれ、こうした事情が内閣府を肥大させている面がある。
省庁再々編の一大事業になりかねない懸念
こうした現状に、政府・与党内から「出口のない掃除機」(ある閣僚)、「難しい仕事は内閣府に持ってきて、ごみ捨て場みたいだ」(伊達忠一・自民党参院国対委員長=後に発言を取り消し)などの声も聞こえ、14年1月31日の党総務会では高市早苗政調会長が「あり方を根本的に考え直す時期に来ているのではないか」と報告。政府側も、菅義偉官房長官が2月14日の衆院予算委員会で「府省庁横断的な仕事、課題が多くなっている」と応じた。
今後の議論は、自民党行政改革推進本部(望月義夫本部長)でまず進められることになる。
ただ、議論の方向は不透明だ。自民党内には、内閣府の見直しに合わせて内閣府と所管が重なる内閣官房も含めた組織の見直し論が出ている。また、2001年の省庁再編により誕生した国土交通省や総務省のような「巨大官庁」は1人の閣僚では見切れないとの問題意識から、「厚生労働省や総務省なども含めて見直すべきだ」(政府高官)との声も聞こえるなど、早くも議論百出状態。抜本的に改革しようとすれば省庁再々編の一大事業になり、「権益」を狙う官僚と族議員の動きが活発になるのは必至だ。
菅官房長官は「(内閣府の)処理が終わった部分は、それぞれの省庁に戻してくことが必要」と語ったが、内閣府は他省庁との併任職員を多く抱えるので、仕事を整理するにしても、省庁側は「それなら人も返せ」となりかねないなど、簡単ではない。
現在の省庁の姿を作った橋本政権の再編論議では、どの省庁もエース級を立てて予算と権限を奪い合う熾烈な「領地争い」を展開したのは記憶に新しく、「本格的な再編を目指せば3年間は行政が停滞する」(政府筋)とも言われる。省益争いは政権の体力を奪うのは確実で、政府側は自民党内論議を見守る構えだが、抜本改革まで進むとみる関係者は少ない。