中央アジア・カザフスタンのナザルバエフ大統領が国名を変更する考えを明かにした。国名に「スタン」が付く周辺国との差別化を図るのが狙いだ。
カザフスタンは旧ソ連構成国の一つ。冷戦終結で1991年に国名をカザフ・ソビエト社会主義共和国からカザフスタン共和国に変更して独立した。同じく旧ソ連に属したウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンを含む中央アジア5か国の中で最大の経済規模、面積(日本の7倍)を持つ。
日本人にとってはあまり馴染みのない国
朝日放送系の「世界の村で発見!こんなところに日本人」で2013年5月にカザフスタンの南東北部の町に米国人の英語教師の夫と住む日本人女性が登場したほどで、日本人にとってはあまり馴染みのない国だが、大統領をはじめ、顔つきは日本人に似ているので、親近感を抱く人もいるかもしれない。外務省によると在留邦人は126人、在日カザフスタン人は199人(いずれも2012年12月)。民族的にはトルコ人などの「テュルク系」のカザフ人が3分の2近くを占め、ロシア人も2割以上いる。宗教は国民の7割がイスラムだ。
ソ連時代の核実験場「セミパラチンスク」はカザフスタンの北東部のロシアとの国境近く。また、現在もロシアの宇宙基地になっているバイコヌールはカザフスタン南西部にあり、宇宙船ソユーズが帰還するのは、その近くの砂漠。そんなことが記憶に残っている日本人が、むしろ多いようだ。現在もロシアとは友好関係維持が外交の柱だ。
資源依存型経済からの脱却を目指し製造業の進出を熱望
日本との関係は意外に深い。カザフスタンは石油、天然ガスなどのエネルギー資源や多様な鉱物資源に恵まれた資源大国で、カスピ海周辺の油田開発には早くから日系企業も投資。ウラン埋蔵量は世界2位を誇るほか、レアアースやレアメタルを含む非鉄金属も豊富だ。商社や電機メーカーがレアアース事業に乗り出すなど日本にとって重要な資源、鉱物などの輸入先となっている。
こうした豊富な資源を背景に、カザフスタンは2000年以降に平均10%という高い経済成長率を続けてきた。リーマン・ショックでいったんは落ち込んだものの、最近は5~7%成長に回復。ただ、資源依存型経済からの脱却を目指し、日本メーカーを始めとする製造業の進出を熱望していて、トヨタがSUVを現地で組み立てる計画がある。身近なところではコンビニチェーンの「ミニストップ」が2013年に出店し話題になった。
著しい経済成長から中央アジア地域で存在感を高めるが、1993年にキルギスタンから国名を変更している隣国キルギスを除き、近隣には旧ソ連構成国に加えアフガニスタンやパキスタンといった国名に「スタン」が付く国が多い。
「エリ」も「スタン」と同じ意味
ペルシア語で「~の国、~の多い所」を意味するのだから、仕方がないのだが、自らの大国意識が芽生え、周辺国の中に埋没しているとの思いを強くしているようだ。ナザルバエフ大統領は2014年2月上旬にカザフ語で「カザフ人の国」を意味する「カザフエリ」を新たな国名にしたいと提案した。「エリ」も「スタン」と同じ意味だ。
このニュースを受け、ネット上では「国名変更に抵抗はないのか」「確かにスタンは多すぎる」「エリは余計でカザフでいい」など、ちょっとだけ話題になった。
今のところ、国名がいつ変わるのかといった詳細は判然としないが、ナザルバエフ大統領はモンゴルには「スタン」が付かないため外国人に魅力的に映るのだと説明したという情報もあり、2017年に首都アスタナで開かれる万博を一つの節目に、大々的に国際的なイメージアップ、知名度向上を図ると見られる。
大統領は国民と協議する考えを示しているが、旧ソ連時代から実権を握り続け、独立以来20年以上にわたって権力の座にあるだけに、最終的には「鶴の一声」で決まるのは間違いないだろう。