「ニコニコ動画」などを運営する大手IT企業のドワンゴが入社希望者から受験料を徴収する計画について、厚生労働省東京労働局がドワンゴに対し職業安定法に抵触するとして、徴収をやめるよう行政指導をした。
ところがネットでは、労働局に対し「杓子定規な対応だ」「頭が古すぎる」といった批判が出ている。ドワンゴ社員の男性もツイッターで、「なぜ徴収しているのか理解してもらえず残念だ」などと反発している。
冷やかし受験を無くすのに効果的だったのに…
ドワンゴが新卒入社試験に「受験料制度」を採用すると発表したのは2013年12月2日。その理由としては「本気の方だけに受験してもらいたい」から。簡単にネットでエントリーできるようになり、一人で100社に応募するといった事態にもなった。
企業側は受験生が多すぎて採用の手間ばかりが増え、本当に必要な人材を見極める十分な時間をかけることが難しい状況にある。就活生も企業も苦しんでいる現状に「なんとか一石を投じられないか」ということで踏み切った、と説明した。15年の新卒入社から採用するとし、作業を進めていた。ただし対象は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県の受験者で、その他の地域の受験者は免除される。
これに対し2014年2月下旬に東京労働局が動いた。新卒者の就職活動が制約される恐れがあるとし、16年春の新卒採用から自主的に徴収をやめるよう行政指導したのだ。もともとこの制度は発表時から賛否両論あって「冷やかしを無くすのに効果的だ」とか、「人材を得るための負担は、求める側(企業)の責任のはず」といった賛否両論が出ていたが、いざこうした行政指導が下されると、ドワンゴを擁護し、労働局を批判する意見がネット上で見られるようになった。
「これ問題にするならコネ入社も規制しろやw」
「就活の根本的な問題に 一石を投じたドワンゴを評価したいな」
「そんなの企業の自由でいいじゃん。一体全体、何の問題があるんだ?」
また、ドワンゴでエンジニアの採用や教育、技術広報などに携わっているという男性はツイッターで、
「ドワンゴの受験料は全額奨学金団体に寄付をするので、手数料などは弊社の持ち出しです。受験料を払ってくださる就活生が増えれば増えるほど、赤字になります。にも関わらず、なぜ導入したのかを理解して頂きたかったのに、残念です」
などと反発している。
「お金以前に、応募に制約をかけていることが問題」
東京労働局に話を聞いてみると、ドワンゴの受験料の徴収は職業安定法39条に抵触している可能性があるのだという。それは、
「労働者の募集に従事する者(以下「募集受託者」という。)は、募集に応じた労働者から、その募集に関し、いかなる名義でも、報酬を受けてはならない」
という部分だそうだ。また、お金がない学生の就職活動が制約される恐れがあり、職業選択の自由を奪う事にもなりかねないという。
「企業が新卒を募集するにあたっては、応募する学生に対し制限を設けないことが前提です。応募したい人は誰でも応募できるようにしなければなりません」
と説明した。かつて「応募できるのは○○大学の学生」といった募集は学歴社会だとして問題になった。現在はエントリーシートに在籍している大学名を書かせない企業も増えている。今回の受験料を払わせる「足切り」のような形は、これと同じようなものだという判断のようだ。労働局はドワンゴから「16年春の採用からは徴収するかどうかは検討したい」という回答が返ってきたと話していた。