「顔が見える食品。」、生産者表記を巡り議論 大手の責任者が複数産地で登場するのは…

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   大手スーパー「イトーヨーカ堂」が展開する、生産者情報が分かるオリジナル食品ブランド「顔が見える食品。」を巡り、インターネット上で、あるキノコ生産者に注目が集まっている。

   きっかけは消費者が2014年3月1日に投稿したツイートだ。異なる産地で作られたキノコ商品に同一人物の情報が記載されているとして、画像付きで疑問を投げかけた。

「同姓同名で偶然キノコ農家さんなの?」

工場代表者は生産者の「顔」?(画像は「顔が見える食品。」サイトのスクリーンショット)
工場代表者は生産者の「顔」?(画像は「顔が見える食品。」サイトのスクリーンショット)
「これどうなの、イトーヨーカ堂さん。長野と北海道に玉木敏明さんがいるの? 同姓同名で偶然キノコ農家さんなの? 消費者を騙すにもほどがないかい。他の県にも同じ人がいたりして」

   「顔が見える食品。」ではブランド商品のパッケージに、産地だけでなく、生産者の名前や似顔絵を印刷している。この消費者が投稿した画像に写る「エリンギ」と「ぶなしめじ」にも、「玉木敏明」という生産者名がイラスト付きで書かれていた。ところが産地を見てみると、エリンギは北海道苫小牧地区産、しめじは長野県上田地区産。同じ生産者でありながら産地がバラバラだ。インターネット上では、このツイートを機に「どういうこと?」と疑問の声が相次いだ。

   ブランドサイトにヒントがあった。生産者ページをみてみると、玉木さんはツイートで指摘された長野県や北海道だけでなく、広島県、新潟県、静岡県、香川県などでもキノコを作っていることが分かる。「全国16拠点25工場にて生産し~」(エリンギの場合)という記述もあった。そして確認責任者欄には、長野県に本社を構えるキノコ栽培の大手企業「ホクト株式会社」の名前がある。

   実は玉木さん、ホクトの取締役兼キノコ生産本部長だったのだ。ホクト公式サイトの役員一覧ページに名前があり、念のため同社に確認したところ「同じ人物です」との回答を得た。「複数産地で同一人物」のミステリーは無事解決した。

「ずっと地元の人だと思ってた」と驚く人も

   ところが、玉木さんの情報が共有されるにつれ、今度は表記についての議論が盛り上がり始めた。サイト内に「ホクト生産本部長」といった記述はなく、またサイトページでは「農家の方ひとりひとりと協力して」との記述もあり、大手企業の生産責任者を複数産地の「生産者」として登場するのは適切なのか、という声が相次いだのだ。

   ツイッターでも「地名と名前が書いてあったらその土地の生産者の名前なのかと思う。生産本部長の名前を載せられてもね」「きのこは工場で生産されているのだからせめて工場長ならね」との意見があがる。また、最初にツイートをした人物も「ずっと地元の人だと思ってたのでショックでした。本当に(笑)」と複雑な心境らしく、「実際はどこの人か知らないんだけど。顔が見える野菜とか書かんといてー」と表記に納得していないようだ。

   一方で、「そもそもそも生産者=自家農家と思う日本の風潮が問題。農業も同じ『仕事』、誰がやってもいい、もちろん企業でも」「生産者の顔=直接作ってなきゃいけないっていう固定観念。頭固いよ」「まずは『生産者』の定義の共有から」と、問題はないとする意見もあがっている。

   セブン&アイ・ホールディングスの広報担当者は「玉木さんは各地のホクトの工場統括を行っている生産責任者です。土で作るような野菜と違い、エリンギやぶなしめじは(工場施設の)菌床栽培で育てています。そのため、生産者紹介には工場の代表者が最適だと考え、玉木さんを載せています」と話す。「生産者」には、玉木さんのような代表者も含めるという見解のようだ。なお、今後も玉木さんの表示を変更する予定はないという。

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