スタンフォード大では「ヘトヘトになる」読書量
佐々木氏は「人と知力で差をつけるカギとなるのはインプット量」「ある程度、知識を整理する力とアウトプット能力があれば、『読書量』と『経験量』こそが、知力の大部分を決定づけるということ」と、読書の大切さを説いている。
スタンフォード大学は3学期制で、各学期は10週間ずつのカリキュラムだという。学生は各期に4クラスを受講するのが一般的で、授業数は年間で480回に上る。学生が1回の授業あたりに200ページほど読むとすると、1年あたり480冊分の本を読破することになる。課題図書は難解で、流し読みでは理解できる内容ではないそうだ。佐々木氏自身、2年間の留学生活で「ヘトヘトになりました」と明かしている。
経営コンサルタントの波頭亮氏も、実業家でMITメディアラボ所長の伊藤穰一氏との対談で同様の説を唱えている。「東洋経済オンライン」2013年8月18日の記事で、「最近見た、最もショッキングな数字は、大学卒業までに読むテキストの量の日米比較で、米国の大学生は4年間で400冊読むのに対して、日本の大学生はわずか40冊しか読んでいないということらしいです」と述べている。続けて「基礎学習、さらにいえば努力の総量が、日本人には足りないように感じます……米国に限らず世界のトップランナーたちはそれくらい勉強している。ちょっと日本人はラクしすぎていると言わざるをえない」と苦言を呈した。
こうした状況に危機感を持ち、教職員と学生が協力して読書を推進する運動を実施している大学はいくつもある。例えばフェリス女学院大学(神奈川県)の場合、学生が主体となって2002年度に「読書運動プロジェクト」を立ち上げた。読書会や関連の映画上映会、講演会などバラエティーに富んだイベントを開催、また学生の「おすすめ本」を紹介するなど、読書への関心を深めてもらおうと努力している。
個々の大学での取り組みは見られる。しかし全体として大きなうねりとなっているとは言えず、読書時間の減少に歯止めがかかっていないのが現状だ。