首都圏で起きた男性の連続不審死事件で殺人罪などに問われ、1審で死刑となった木嶋佳苗被告(39)が2014年1月にブログを開設していたことがわかり、インターネット上に衝撃が走っている。
内容は拘置所での生活から、支援してくれる「おじさま」の存在、ノンフィクション作家・佐野眞一氏への辛らつな批判まで幅広い。読者からは賛否両論が寄せられ、反響を呼んでいる。
タイトルは「木嶋佳苗の拘置所日記」
木嶋被告は2009年に東京都、千葉県、埼玉県で男性3人を練炭自殺に見せかけ一酸化炭素中毒で殺害したとして、殺人罪などに問われ、12年4月にさいたま地方裁判所の裁判員裁判で死刑判決を言い渡された。裁判の過程では週刊誌などで、木嶋被告の結婚詐欺の手口や愛人契約の稼ぎなどが派手に報道され、世間を驚かせた。木嶋被告の語る華々しい男性遍歴と、その容姿や太った体型にギャップがあると感じた人も多かったようで、その点でも関心を集めた。弁護側は一審判決後すぐに東京高裁に控訴。現在は2審の判決を待っている段階だ。
そんな木嶋被告のブログの存在が2014年2月26日、「週刊文春WEB」のスクープ速報によって明らかになった。「木嶋佳苗の拘置所日記」と題したブログには1月5日に1本目の記事が投稿され、2月27日時点で計14本が公開されている。1本目の記事から4000文字以上と長文で、「このブログでは、本音のさらにその奥にある本心のようなものを伝えていきたいと考えております」と綴っている。
ジャーナリスト青木理氏へのラブコールも
内容は食事や外部交通といった拘置所内での話が中心。ユーモアを織り交ぜながら、死刑判決を受けた人物とは思えないほど穏やかな調子で書かれている。中でも目立つのは、支援してくれる男性たちの話だ。たとえば、2月16日に公開された記事では、自身が世話になった9人の男性弁護士に触れたうえで、「私の人生は、ずっと男性に支えられてきました」と書いている。
ブログを管理しているのも、木嶋被告が「おじさま」と呼ぶ男性だ。「お鮨好きのおじさまは、私の原稿をパソコンで打ち込むのが面倒で、お金を払って人に頼んでるの。私そのものがエンターテインメントだから文句言わない。彼は、お金払ってワハハーって笑ってる。私は、こういう人が好き」と紹介している。ちなみに恋愛関係にはないらしい。
他に「男性達からの毛布とタオルケット」、「たくさんの記念切手に『可愛い切手をお贈りしたく』と書かれた一筆箋を添えて送ってくれた彼」など木嶋被告に寄り添う男性たちがさりげなく登場しているのも印象的だ。また、以前から「敬服」しているというジャーナリストの青木理氏については「あのルックスで取材に来られたら、ドキドキしちゃうだろうなぁ」と書き、青木氏が木嶋被告と比べられることの多い鳥取連続不審死事件の上田美由紀被告を取材したことに「嫉妬心」をあらわにしていた。
「救いのようがない」「文才ある」と賛否両論
一方で、穏やかな口ぶりに合わず、皮肉たっぷりに特定の人物を非難したこともある。死刑判決後、事件関連の本が相次いで出版されたが、木嶋被告はその中でも「別海から来た女」を書いたノンフィクション作家の佐野眞一氏をやり玉に挙げている。「彼は、過剰な人の心の闇や血脈だのに拘泥し過ぎるあまり、大切なことを見失っている」「取材対象をいかに口汚く罵ることができるかに全精力を注ぐ下品な芸風」と酷評し、下のような「感謝の辞」さえ贈っている。
「ジャーナリストとして活躍する取材記者を何人も使って、著名なノンフィクション作家が、私についてあの程度の本しか書けなかったことは、自叙伝を執筆する時の励みになりました」
さらにもう一人、木嶋被告の100日裁判を傍聴して「毒婦。」を書いた文筆家の北原みのり氏にも反論する。こちらは名指ししていないものの「『毒婦』ライター」と呼んでいることから北原氏であることは明白で、木嶋被告は北原氏を「木っ端ライター」と呼び、「彼女が私に関して語ることの7割は、事実じゃありません」「彼女の取材能力は限りなくゼロに近い」と書く。さらには「フラれた恋人に付きまとうストーカーみたい。片思いの恋愛が成就しなかった人、と言った方が正しいかな」と非難した。
こうした内容にネットでは賛否の声が上がっている。ブログのコメント欄にはさっそく多くの声が寄せられ、「この図太さってどんなふうになると出来上がるんだろうか?」「救いのようのない自己顕示欲の塊です」と批判的な意見が目立つ。ところがツイッターでは、批判的な意見に加えて「林真理子みたいなエッセイ本出したら売れそう」「変な作家の文章より全然いい。思わず全記事読んでしまった」「これなら男にモテるのは分かる」と評価する意見も多々寄せられている。ライブドアブロガーランキングでは27日17時時点で1位にランクインしていて、今後しばらく注目を集めそうだ。