日銀は2014年2月18日の金融政策決定会合で、銀行などが企業や個人に貸し出すことを支援する低利融資制度を、3月末の受付期限後も1年延長し、規模を2倍に拡充することを決めた。
市場の一部に期待があった「追加緩和」ではないが、現行の「異次元緩和」を補完する意味合いの制度を「2倍」にするという分かりやすさが好感された。
平均株価は一時、前日終値比500円超も上昇
1月の記者会見で黒田総裁が、追加緩和が遠のいたことを示唆したため追加緩和期待がしぼむ「地合い」だったこともあり、サプライズは大きかった。日経平均株価は一時、前日終値比500円超も上昇。13年4月に異次元緩和を導入した際に市場が好感した「黒田マジック」の再来と見る向きもある。
「(異次元緩和導入によって金融緩和の)エンジンの馬力が上がっているので、その性能を生かすためにタイヤを強化した」
黒田東彦総裁は支援策の延長・拡充を決定した後の記者会見で、自動車にたとえてこう述べた。異次元緩和の目的は世の中に大量に資金供給することで、長期を含めた金利を引き下げることを通じて、企業の設備投資や個人消費を刺激し、結果として経済を活性化させることだ。
日銀が金融機関から国債を買い取ることなどで供給する資金供給量(マネタリーベース)は13年4月の異次元緩和導入以降、1.5倍に増えているのに対し、銀行から企業などへの貸出は前年同月比2%台で増えてはいるが、伸びの鈍さも指摘される。日銀から銀行などの金融機関に低利で融資する制度は直接、企業などへの貸出を増やすことが期待できる。異次元緩和を補完する役割があると言え、黒田総裁は「タイヤ」と表現したわけだ。
延長・拡充される低利融資制度は2種類
延長・拡充される低利融資制度には2種類あり、いずれも金利は年0.1%で融資期間は4年。一つは環境、エネルギー、医療など成長分野に融資した金融機関に対するもので、通常融資枠3.5兆円を7兆円に倍増。1金融機関あたりの限度は1500億円だったが、既に使い切った銀行もあるため、これを1兆円に増やす。
もう一方は、分野を問わず貸出残高が増えた分が対象。従来は増えた分が限度だったが、増えた分の2倍に拡大する。衆院経済産業委員会に2月21日に呼ばれた日銀の雨宮正佳理事(金融政策などを担当)は「2倍」への拡充について、「国内総生産(GDP)を押し上げ期待する」と述べた。
低利融資制度の「倍増」が株式市場に伝わったのは2月18日の午後0時28分ごろ。昼休みが終わり、0時30分からの午後の取引が始まる直前だ。
上げ相場をまず引っ張ったのは一部の外国人投資家
日経平均の午前終値は前日終値比130円ほど上昇していたが、午後の取引再開からものの10分ほどで前日終値からの上昇幅を約150円も拡大し証券関係者を慌てさせた。顧客から「何が起きた」と問い合わせがあってもうまく答えられないケースもあったようだ。
この日の上げ相場をまず引っ張ったのは一部の外国人投資家だった。関係者によると「発表内容を読み込む間もなく『2倍』に反応して買いまくった」ようだ。これに慌てた他の市場参加者も買いに走り、あれよあれよという間に500円超上昇し、終値は前日比450円13銭高の1万4843円24銭。終値の上げ幅は6か月半ぶりの大きさだった。日銀内にも「こんなに株高を呼ぶとは思わなかった」との声が多く、「黒田マジック」再来に驚きが広がる。半面、「株安で困ったら日銀に何かやらせればいいと政府が意を強くしないか」の懸念も芽生えている。