「松下幸之助」といえば、現在のパナソニックを一代で築き上げた日本を代表する経営者で、「経営の神様」として知られる。
そんな故・松下幸之助氏がいま、女性のあいだでひそかなブームになりつつあるようだ。
松下幸之助氏の言葉に「生きるヒント」
「松下さんの『道をひらく』を読んで、前向きになれた」「『成功するまで続けて成功』という言葉が好き」――。故・松下幸之助氏の考え方に元気をもらった、背中を押してもらった、という女性が増えている。
松下氏が立ち上げたPHP研究所の「月刊 PHP誌」の読者でつくる「全国PHP友の会」が2013年11月、初めて「松下幸之助女子会」を開催。13人の女性が、それぞれ好きな著書を持ち寄り、共感したところや影響を受けたところなどについて熱く語り合った。
女性たちは20~30歳代。PHP研究所の本部がある京都府周辺に住む、働く女性が多くを占めた。
ある女性は、1968年発刊の「道をひらく」にある「大事なことは、おたがいに長所と欠点とを素直な心でよく理解をしておくということ」という言葉に、「恋人とケンカしたときに、自分に素直な心が足りないと感じた」と語った。
どの女性も松下氏の言葉に、仕事や家庭での人間関係で自信を失ったとき、人生の困難にぶつかったとき、立ち直る勇気や問題解決の「糸口」をみつけたようだ。PHP研究所は、「交流を通じて、また新たに感じとれることも多いと思います」と話している。
2014年3月1日には、第3回の「女子会」が京都で開かれる。「他の年代でもぜひ!」との要望があったことから、今回は年齢を問わず、応募を受け付ける。
超ロングセラーの「道をひらく」、モデルの押切もえさんも愛読書
松下幸之助氏の著書を読んで感銘を受ける「幸之助女子」はたしか増えているようだ。2013年には、「日経WOMAN」の読者アンケートで「本を読んで、その言葉や生き方に感銘を受けた人は?」との問いに、アップルの創業者の一人、スティーブ・ジョブス氏や、経営学者で「マネジメント」の著者、ピーター・ドラッガー氏を抑えて1位となったのが、松下幸之助氏だった。
モデルの押切もえさんも「幸之助女子」の一人。押切さんは、これまでもインタビューなどでたびたび、松下幸之助氏の「道をひらく」を、感銘した本にあげていた。「シンプルな言葉なのに、心に染み入る。元気にしてくれる。そんな一冊です」という。
「道をひらく」は、2013年12月に累計発行部数が500万部を突破。いまなお読み継がれる超ロングセラーだ。松下氏が自分の体験と人生に対する深い洞察をもとに綴った短編随想集で、あらゆる年代や職種の人に役立つ。「座右の書」という人も少なくない。
PHP研究所によると、紀伊国屋書店調べで「道をひらく」は、2012年11月には男性と女性の読者比率が2対1だったが、13年12月に500万部に到達したときには、その比率が1対2に逆転した。
また出版科学研究所によると、戦後のベストセラー(単行本と新書のみ)では、黒柳徹子さんの「窓ぎわのトットちゃん」(580万部)、J・K・ローリングさんの「ハリー・ポッターと賢者の石」(509万部)に次ぐ歴代3位。いまや「道をひらく」は、女性読者に支えられて伸びているというわけだ。