「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」とは 2ちゃんねるの「難問」に阪大教員が大真面目に答えた!

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   ネット掲示板の「2ちゃんねる」で「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」という問いについて考えた有名な書き込みがある。普通にドーナツを食べたら穴はなくなってしまうが、何とか穴だけを残せないか、という疑問への答えを学問領域ごとにシミュレートしてユーモラスに答えたものだ。掲示板でコピー&ペーストされるたびに改良され、何人もの手で練り上げられた回答が定型文として2ちゃんねるに定着していた。

   ところが、2ちゃんねらーの間で広がっていたこの定型文に飽き足らず、アカデミックな立場から真面目に取り組んだ回答文が新たに公開された。大阪大学の教員・学生らによるもので、書籍として刊行された。

12人の教員が難問に挑む

『ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義』(大阪大学出版会)
『ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義』(大阪大学出版会)

   「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」の回答は、2ちゃんねるでは以下のような内容で定着していた。

数学派-非ユークリッド幾何学的には可能(難しいよ派)
化学派-穴に空気とは違う気体をつめれば?(それ残ってるのその気体じゃん派)
統計派-100万回食べれば1回くらい穴だけ残ってるかもしれない(めんどくさいよ派)
言語派-問いかけが漠然としていて厳密な対策が不可能(ごめんなさいだよ派)

   このほか延々と学問分野ごとに回答が並び、それらが樹形図のように分類されている。それぞれの学問分野の回答を短い文で表現し、括弧の中の言葉でオチを付けるというスタイルだ。「分野」や「派閥」を分類して表記するのは2ちゃんねるで使われる一般的な形式で、似たようなものとして清純アイドルが排便しないという「幻想」をめぐる議論を記したものもある。

   しょせん「遊び」なのだが、この「ドーナツの穴」という命題について、大阪大学に所属する研究者たちが真面目に回答を試みた。しかも『ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義』(大阪大学出版会)という書籍まで出したのだ。数学、工学、化学、美学、歴史学などの分野から12人の教員が答えのない難問に挑んだ。2014年2月14日、発売された。

   同書は「学生が企画する本を学生の力で出版する」を最終目標に2012年4月からスタートした、大阪大学「ショセキカ」プロジェクトから生まれた。大阪大学教員・大阪大学出版会のサポートのもとで、学生が企画、制作、広報、販売までに関わり、「大阪大学の知の資産を"本"として発信し、社会に伝える」ことを目指した。

   目次に書かれた各章の題名は「ドーナツの穴の周りを巡る永遠の旅人―精神医学的人間 (井上洋一)」「ドーナツの穴談義のインターネット生態学的考察 (松村 真宏)」「ドーナツ型オリゴ糖の穴を用いて分子を捕まえる (木田敏之)」といったもので、柔らかなドーナツという言葉と、学問用語が組み合わさり不思議な印象を与える。

ドーナツを樹脂で固めて機械で削る

   工学的アプローチを試みる「ドーナツを削る―工学としての切削の限界(高田 孝)」では、穴だけを残してドーナツを削り取るため、機械加工を一つの方法として検討している。回転する金属の円筒などに工具を当てて削る「旋盤加工」という手法で、固定したドーナツを回転させ工具を当てると穴の周囲のドーナツが削れていく。

   加工する際にドーナツの柔らかさが問題になるが、「加工精度も考えると樹脂などで浸漬させて固形化させることが有効と思われる」と、その解決方法が書かれている。他にも「ウォータージェット加工」や「熱エネルギーによる加工(レーザー)」など高度なテクノロジーを用いるアイディアも紹介して、最終的には「実際の社会では費用対効果も重要であり、その意味では人力で十分ということになるかもしれない」という結論になった。

   各章の学問的な内容の合間には、息抜きとして読める「世界のドーナツコラム」も挟み込まれている。

   ツイッターでは、「ドーナツを穴だけ残して食べる方法とかいう本が平置きで売ってるwww」「ドーナツを穴だけ残して食べる方法、最初は何やってんだ教授は‥‥って思ってたけど最近少しだけ読みたくなってきた」

といった反応が出ている。

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