キャロライン・ケネディ駐日米国大使にNHKが取材を申し込んだところ、NHK経営委員で作家の百田尚樹氏の発言を理由に難色を示されたと共同通信などが報じた。ネット上では、米国側の対応や百田氏発言の是非を巡る論議にまでなっている。
百田尚樹氏の発言とは、東京都知事選に出た田母神俊雄氏の応援演説を2014年2月3日にしたときのものを指す。
「発言の影響が、報道の現場に及んでいる」
報道によると、百田氏は、米軍による東京大空襲や原爆投下を「大虐殺」と表現し、A級戦犯を裁いた東京裁判は「それをごまかすための裁判」だったと指摘した。さらに、南京大虐殺についても、「そんなことはなかった」と発言していた。
これに対し、在日米国大使館は8日、米政府の立場として、「非常識だ」などと百田氏の発言を非難していた。
共同通信などによると、NHK報道局国際部の取材班は、ケネディ大使が13年11月15日に着任した直後に、米大使館の報道担当官にインタビュー取材を申し込んだ。いったんは、報道番組「クローズアップ現代」で取り上げてほしいと大使館側が打診してきた。ところが、百田氏の発言が報じられた後、取材班が大使館を訪れると、その発言でインタビューは難しくなったと担当官から伝えられた。「ケネディ大使本人とワシントンの意向だ」と説明を受けたといい、その後は大使館から連絡もないという。
共同の記事では、複数の関係者が取材に明かしたと報じ、「発言の影響が、報道の現場に及んでいる」としている。
このニュースについて、ネット上では、米大使館の対応などについて、賛否が分かれている。
「過剰反応しすぎだ」と米大使への疑問も
米大使館に同情的な声としては、「まぁこういう話になるわな、そりゃ…」「『公共放送』が『日米関係を悪化させる』」といった書き込みがあった。また、「公正な報道には不適格な人材」「この経営委員には辞めていただくしかないようだ」と、発言をした百田尚樹氏への批判も聞かれた。
一方で、米大使館の対応について、疑問を投げかける声も多い。
「これはチョット過剰反応しすぎだと思うが・・・」「ちと了見が狭い気がするぞ」「本当のことを言ってはいけないとか怖いね」「インタビューを受けた上で百田氏の発言を批判すればいいのでは?」
百田氏本人は、ツイッター上で、「アメリカは『東京大空襲と原爆投下は大虐殺』という言葉に、よほど腹が立ったのだろう」としながらも、自説は曲げない考えを示した。ツイートでは、「『無辜の一般市民の大虐殺』であることはまぎれもない事実」「これをいつまでも恨んでも無意味である。ただ、忘れてはならない」とつぶやいている。さらに、「第一回の東京大空襲は下町の民家密集地帯を狙って行われた。米軍はいかにして日本人を効率的に焼き殺すことができるかと、砂漠に日本家屋の町を作って実験を繰り返した」とも発言した。
なお、NHK取材を巡る事実関係などについて、J-CASTニュースが2014年2月17日に米国大使館を取材しようとしたが、アメリカの祝日「プレジデント・デー」で休館だったため話が聞けなかった。