日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉が本格化しようとしている。日EUは2014年3月末から4月初旬にかけ、第5回目の交渉会合を東京都内で開催することで合意、この会合に向け、日本はワインなど、EUは自動車などの関税撤廃の具体的な提案を交わす見通しだ。
EUは4月にも、日本とのEPA交渉を再検証し、状況次第では交渉を打ち切る方針を示しており、これを前に交渉は加速すると期待されている。
水面下で事前交渉にあたる事務折衝
第4回会合が1月末、ベルギーのブリュッセルで開かれ、投資や知的財産権など各分野で積極的な議論を実施。今後、具体的なオファー交換を早急に行うことで合意したとされる。
日EUのEPA交渉は昨年4月にスタートし、既に水面下で事前交渉にあたる事務折衝が着々と進められてきている。日本はこうした折衝からEU側の期待感をうかがい、EUが主要輸出品として重視するワインの輸入にかける関税の段階的引き下げを提案する方向で検討している。
EU産ワインに対し、日本は15%または1リットル当たり125円の関税をかけている。これまでの各国とのEPA交渉でも、日本はワイン関税の撤廃・削減に取り組んでおり、メキシコとのEPA(2005年4月発効)では即時撤廃、チリとのEPA(2007年9月発効)では12年かけて段階的に撤廃することを決めた。
EU産ワインは日本のワイン輸入量全体の約75%を占める。ただ、輸入価格が数百円のチリ産ワインに対し、EU産ワインは1000円台と比較的高価格だ。日本国内でもワイン製造が積極化していることなど市場への影響も含めて総合的に判断し、日本はEU産ワインの関税は、10年以内の段階的撤廃が適切と判断している模様だ。これが実現すれば、消費者にとってはイタリアやフランス産ワインをより安価に入手できるようになる。
メリットが小さい場合は交渉を中断する意向
一方、EUはワインと同じように主力輸出品と位置づけているチーズについても、日本に関税撤廃を求めたい意向。しかし、チーズなどの乳製品は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉で、日本が〝聖域〟とする農産品の「重要5項目」(コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)に含まれる。このため、EUは日本側が受け入れる可能性は低いと見て、当面は撤廃を求めない方針とされる。
また、EU側は日本車にかけている10%(乗用車)の関税撤廃の提案に踏み切る見通しだ。ただ、イタリアやドイツなど域内に多くの自動車メーカーを抱えるEUは、自動車の輸出増を強く望んでいるとされ、日本の安全基準に関わる規制緩和など非関税障壁の撤廃を強く求める構えとされる。
交渉が積極的に展開される方向になっているのは、EUが行う再検証作業がある。EUは交渉開始から1年後に交渉内容を検証し、メリットが小さい場合は交渉を中断する意向を示している。中断を避けるには、双方に利点がある具体的な交渉を積み重ねる必要があり、日EU双方の大胆な提案合戦につながる可能性もある。