JR九州の豪華列車「ななつ星in九州」の成功を受け、JR東日本と西日本が相次いで同様の列車を走らせる方針を打ち出している。
いずれの列車も、「その列車でしかできない体験」や高級感を売りにしており、シニア層や、今後増えるとみられる海外からの富裕層の利用が期待される。
「ななつ星」、1人43~70万円でも倍率18.2倍
ななつ星は、13年10月に運行開始。予約は常にいっぱいだ。現時点では14年8~11月の予約を受け付けており、のちに抽選が行われる。価格はかなり強気の設定で、3泊4日コースで2人部屋を利用した場合、1人あたり43~70万円。それでも1月20日時点で3570件の応募が寄せられており、倍率は実に18.2倍の「狭き門」だ。
この動きが九州以外にも波及しつつある。JR西日本の真鍋精志社長は14年2月13日の記者会見で、17年春から豪華列車の運行を始める考えを明らかにした。同社は13年3月に公表した中期経営計画の「鉄道の強みを活かし、地域と一体となった観光振興の促進」という項目で、この構想を盛り込んでいた。当初の運行開始時期は「17年度中」とされていたが、これが前倒しになり、さらに具体化した。
社内にはプロジェクトチームも発足し、6月には車両のデザイナーも決まる
新列車は日本海側を走り、料金は「ななつ星」よりも低めに設定する。「京都→大阪→鳥取→島根」といったルートになるとみられる。鳥取砂丘や、近年はパワースポットとしても知られる出雲大社のような山陰で有名な観光地を軸にしたコースになりそうだ。真鍋社長によると、新列車を担当することになった内山興米子支社松江支店長が「山陰地区を孫悟空のように飛び回って」、観光地やイベント、旅館・ホテル、食材、特産品などのネットワーク作りに奔走するという。
JR東には技術面で一日の長
JR西に先立つ形で、JR東日本も「クルーズトレイン」を新造して16年春以降運行を始める方針を13年6月に発表している。運行ルートや価格はまだ明らかになっていないが、新造される列車についてはある程度発表されている。10両編成で1両あたり客室を2~3室設ける。いずれもスイートルームで、2つのランクの部屋が設けられるという。それ以外に、食堂やラウンジもできる。
技術面ではJR東日本に一日の長がありそうだ。新列車は、電車のようにモーターで動くが、架線が通っていない非電化区間も走ることができる。電化区間は架線から電気を取るが、非電化区間では発電機を回してモーターに電気を送るためだ。この方式は「EDC方式」と呼ばれ、日本に導入されるのは「クルーズトレイン」が初めてだ。