2ちゃんねるまとめサイト運営者の個人情報がネットに晒され、それをもとにした迷惑行為が相次いでいる。被害を受けて閉鎖したサイトの数は10を超え、さらに他のサイトも巻き込んで騒ぎが拡大する「祭り」状態となった。
発端は2ちゃんねる「なんでも実況J(なんJ)」板で作成された「偽装gif」だ。単なるの画像のように見えるが、1、2分経過すると殺害予告画像に突然切り替わる。これに気づかずそのままスレッドを転載したまとめサイトが、意図せず自らのサイトで特定人物の殺害予告をしてしまった。
ドメイン情報から本名や住所を特定
「なんJ」ユーザーは、まとめサイトの非を責めて「炎上」させたほか、ウェブサイトのドメイン登録情報を調べられるWhoisを使って個人情報を調べ上げ、本名、住所、電話番号を特定した。ドメイン情報はトラブル解決のため公開が原則となっている。個人情報を隠すための代行サービスもあるが、炎上したサイト管理者はそのまま自分の情報を登録していたようだ。
運営していた他のサイトや通っている学校、顔写真までも次々に晒し上げられ、
「今回はお騒がせしてしまい大変申し訳ありませんでした。きちんとした内容の確認をせず、転載をしてしまい大変反省をしております」
と謝罪・サイト閉鎖に追い込まれた。
その他まとめサイトの多くもドメイン情報から個人の特定可能だと判明し、「なんJ」ユーザーは個人情報をどんどん暴いていった。Whois情報が晒されたサイトの数だけで30を超える。
2013年8月に起こった「2ちゃんねるビューア(通称●)」個人情報流出問題のデータと照らし合わせる者まで現れ、アニメ「プリキュア」を扱うまとめサイト管理者が特定された。ツイッターやサイトのパスワードが「●」と同一ではないか、という推測をもとにログインを試みたユーザーが乗っ取りに成功し、Amazonでのアダルトグッズ購入履歴も晒された。これらは不正アクセス禁止法に違反する行為だ。
迷惑行為は過激化して、流出した個人情報で勝手に企業や団体にエントリーしようという動きもある。真偽は明らかではないが、騒動のまとめWikiには「アルカイダ(メールにて入隊申し込み完了)」「アレフ(寄付申し込み)」などの記載があった。検索エンジンのキーワード候補にネガティブなワードが出るようにする「サジェスト汚染」の方法も共有されている。
アフィ収入サイト全般に攻撃対象が拡大
こうした「まとめサイト潰し」の騒動は「なんでも実況J」板だけでなく、「ニュース速報(VIP)」板、「ニュース速報(嫌儲)」などに広がり、攻撃対象のサイトを一覧にしたスプレッドシートも作られた。それによると閉鎖に追い込んだサイトは11に上る。
当初の標的は殺害予告画像の転載をした一部まとめサイトだったが、対象はアフィリエイト収入を得る2ちゃんねるまとめサイト全般に拡大しつつある。その背景にあるのは、2ちゃんねる一部ユーザーの「まとめサイト嫌い」にある。
まとめサイトは、書き込みの一部を「編集」してアクセスを稼ぎ、広告収入を得るのが一般的なモデルだ。コピペで記事を構成するので「他人の褌で相撲を取る」との批判があるのに加え、中には恣意的な書き込みの抽出で対立を煽り、誹謗中傷するサイトも存在しているため以前から問題化していた。
2012年7月には、事態を重く見た2ちゃんねる運営が、一部まとめサイトについて「刺激的な内容で広告収入を得ることが生業になっている」と指摘し、転載禁止を言い渡したこともあった。
今回の騒動は、まとめサイトを叩く格好の機会とばかりに2ちゃんねらーは盛り上がり、大手サイトを引きずり出そうと目論んでいる。「祭り」のまとめWikiに「アフィブログ管理人の皆さんへ」というメッセージがある。
「今の祭りに巻き込まれブログを閉鎖するのは嫌だ。けど対策なんてできない……そんなあなたに朗報 自分より上の管理人の情報を流出させればいいんです。彼らは大物が出ればそちらに集中するので中小への注目は薄くなります。更には自分のブログが上位に入れます」