結果不振選手の批判はブラック企業の論理?
こうした論調に、為末大さんが日刊スポーツの記事で違和感を示した。為末さんは「選手の強化費は国費から出ているものだから、当然選手は結果を出すべき」との批判に焦点をあて、日本の強化費の現状を説明する。
今日の日本では、サポート態勢は十分ではなく、強化費も発表している国の中で最も低いと指摘する。実際、日本の強化費の少なさは以前から注目されており、たとえば、報道されている北京五輪(08年)の年間強化費をみてみると、ドイツ274億円、米国165億円、中国120億円、英120億円などに対して、日本はわずか25億円程度だ。
為末さんはメダル獲得に不利な状況にいる中で「選手たちは努力していると言えるのではないか」と評価し、同時に、そうした状況下で個々にメダルという結果を求める風潮を「選手に酷な状況」と危惧する。これは「足りないリソース(資源)を気持ちで補わせる」「全体的問題を個人の努力に押し付ける」という日本的精神論に通じるものであり、「結果が出せないことに批判が集まるたび、ここ数年続くブラック企業を想像してしまう」との見解も示した。