ミクシィ「再成長」に向けて社長交代 絶好調「モンスト」効果持続できるか

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   交流サイト(SNS)大手ミクシィの朝倉祐介社長は、2013年度第3四半期の決算説明会の席で社長の交代を発表した。ゲーム「モンスターストライク(モンスト)」のヒットなどで、事業再生にめどがついたためという。

   今後は「再成長のフェーズ」と位置付け、モンストを手掛けてきた森田仁基執行役員が次期社長に指名された。

「モンスト」と結婚支援事業が業績支える

次期社長の森田仁基執行役員(左)と朝倉祐介社長
次期社長の森田仁基執行役員(左)と朝倉祐介社長

   森田氏は2014年6月の株主総会をもって、正式に社長に就任する。朝倉社長はわずか1年での退任となり、顧問となる。

   新体制への移行が決まった背景には、第3四半期で不振が続いていた事業の再生に道筋がついたためと、朝倉社長は2014年2月13日の決算説明会で説明した。2012年第1四半期以降続いていた売上高の減少に歯止めがかかり、営業損失も前期から改善。12月には単月黒字を達成した。また通期の連結業績予想を上方修正し、売上高は80億円から115億円に、営業損益は16億円の赤字から2億円の黒字とし、最終損失も26億円から3億5000万円に縮小している。

   売上高増に貢献したひとつが、2013年10月に投入したモンストだ。スマートフォンで遊べる「ネイティブアプリ」として、12月には利用者が250万人を突破。第3四半期では、モンストを含む課金収入が14億600万円となり、前期の12億4900万円からアップした。通期の売上高の上方修正分35億円も、大半はモンストによるものとみている。

   もうひとつが結婚支援事業だ。2013年10月、いわゆる「婚活」や男女の出会いの場を提供するマッチングサイトの運営会社を買収し、12月から連結計上した。発表によると、この事業を含む「その他」の売上高が4億5200万円となり、前期の6000万円から大幅増となっている。広告の売上高も2011年第4四半期以降「右肩下がり」だったが、ようやく底を打った格好だ。

   朝倉社長は、「当社が培ってきた『つながり』の価値観を、様々な事業領域に広げる取り組みを重ねてきたが、これが奏功した」と話す。構造的な赤字からは脱却し、「事業再生フェーズから、今後は再成長フェーズに入っていく」と強調した。新たな段階では自らは退き、「事業寄り」である森田氏にバトンタッチするのが最良だとの結論に至ったという。

完全に「ゲーム会社」に軸足移すことはない

   森田氏は2008年にミクシィに入社、「mixiアプリ」や「mixiゲーム」に携わってきた。13年にゲーム事業本部長に就くと、モンストをはじめとするネイティブアプリの開発を統括してきた。ミクシィの「反転攻勢」の柱となるモンストを手掛けた、いわば功労者といえよう。

   とは言え、就任からわずか1年での社長交代にはやや唐突感がある。「モンスト後」の戦略も現時点では不透明だ。朝倉社長は「モンスト以外の各事業も体質改善ができたからこそ、このタイミングで新体制への移行を決めた」と話し、モンストへの過度な依存を否定した。「朝倉体制」では「非常事態からの脱却」が至上命題で、それを達成した現在は中長期的な成長を実現するうえで、最適な布陣を組むために森田氏の新社長就任を決めたようだ。

   また森田氏がゲーム事業のバックグラウンドが色濃いため、創業以来のSNS事業からゲーム会社へとシフトしていくのではないかと報道陣から質問が飛ぶと、森田氏自ら「ゲームに限らず『つながり』を加速させていくサービスを目指していく」と説明した。

   確かに業績は回復したが、通期ベースでの連結最終損益は、縮小の見込みとはいえ2006年の上場以来初となる赤字が避けられない。また2013年11月、一部従業員がカスタマーサポートに急きょ異動になったことで「リストラ」「追い出し部屋に送られた」といった怪情報が流れた。ミクシィは「そもそも追い出し部屋などない」と否定するが、同社のイメージを傷つけたのは否めない。

   モンストでの貢献度が高い森田新社長が、「再成長フェーズ」に向けてどんな青写真を描いていくだろうか。

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