別人に作曲させていた佐村河内守氏(50)が、耳が聞こえなくなった後に回復したと発表して、そんなことがあるのかと話題になっている。
曲を提供していた新垣隆氏(43)は、佐村河内守氏について、「耳が聞こえないと感じたことは一度もありません」と明かして物議を醸した。一方、佐村河内氏は2014年2月12日になって、一連の騒ぎをマスコミあての手紙を通じて謝罪するとともに、新垣氏の主張に反論した。
「あれ?治らないから障害なんじゃないの」
その手紙では、佐村河内氏は、耳がまったく聞こえなくなったのは事実で、最も重い2級の身障者手帳を取得した後も、ひどい耳鳴りに悩まされ続けていたとした。しかし、3年ほど前からは、体調に左右されるものの、「耳元で、はっきり、ゆっくりしゃべってもらうと、こもってゆがむ感じはありますが言葉が聞き取れる時もあるまでに回復していました」という。
代理人の弁護士は、耳は聞こえないと思うとしていたが、佐村河内氏は、バレることの影響を気にして本当のことが言えなかったと釈明した。そのうえで、「耳のことについては、専門家によるきちんとした検査を受けてもいいです。その結果二級ではないと判定されたのなら手帳は必ずお返しいたします」とつづっている。
こうした主張について、ネット上では、疑問の声が相次いでおり、「あれ?治らないから障害なんじゃないの」「この期に及んでまだ嘘つくのか」といった指摘が出ている。さらに、「こう来たか…って感じ 昔から嘘ついていたってのを証明するのは難しいからな」とうがった見方まであった。
報道によると、佐村河内氏の弁護士は、耳鼻科の専門医に見解を聞いたとして、「器質的な原因で聴力が2級相当まで失われているのであれば、それが限定的とはいえ、言葉が聴き分けられるまで回復する可能性は低いのではないか」と言われたことは認めた。その一方で、「原因が精神的なショックによるものであれば、そういったこともあるかもしれない」との説明を受けたという。
精神的なショック、絶対ないわけではないが…
聴覚障害に詳しい東京都内のあるクリニックの耳鼻科医は、精神的なショックで一時的に耳がまったく聞こえなくなることは絶対ないとは言えないとした。しかし、身障者手帳2級の取得者が言葉を聞き取れるほど回復したケースについて、「私の知っている限りでは、初めてです」と驚く。
「ほとんどの医者がそう言うのではないでしょうか。信じられない奇跡と言ってよく、学会で発表しないといけないレベルの話ですよ」
ウソをうのみにして医師が聴覚障害の診断書を出すことについては、「普通はありえませんね」と言う。医師が聴力検査などをして不審に思えば、大学病院で脳波などを測る検査をしてもらうといい、そうすれば分かるというのだ。
もし最初から耳が聞こえていたとすれば、今後問題になりかねないとこの耳鼻科医は指摘した。実際、北海道では2009年に100人以上が聴覚障害の身障者手帳を不正に取得していたことが明るみに出て、虚偽の診断書を作ったなどして、医師らが逮捕される事件が起きている。
ただ、遡って検査はできない以上、佐村河内守氏は本当に耳が聞こえたのかどうかは証明できないという。とはいえ、なぜ言葉が聞き取れるようになってから手帳の返納などをしなかったのかは疑問が残るとしている。
報道によると、佐村河内氏が住んでいる横浜市は、事実関係を確認したうえで、問題があれば身障者手帳の返納を求めると明らかにした。田村憲久厚労相も、14年2月12日の会見で、身障者手帳の取り消しなど適切な対応を取る必要があるとし、障害年金の受給条件を満たしていなければ返還を求めたいと述べた。