精神的なショック、絶対ないわけではないが…
聴覚障害に詳しい東京都内のあるクリニックの耳鼻科医は、精神的なショックで一時的に耳がまったく聞こえなくなることは絶対ないとは言えないとした。しかし、身障者手帳2級の取得者が言葉を聞き取れるほど回復したケースについて、「私の知っている限りでは、初めてです」と驚く。
「ほとんどの医者がそう言うのではないでしょうか。信じられない奇跡と言ってよく、学会で発表しないといけないレベルの話ですよ」
ウソをうのみにして医師が聴覚障害の診断書を出すことについては、「普通はありえませんね」と言う。医師が聴力検査などをして不審に思えば、大学病院で脳波などを測る検査をしてもらうといい、そうすれば分かるというのだ。
もし最初から耳が聞こえていたとすれば、今後問題になりかねないとこの耳鼻科医は指摘した。実際、北海道では2009年に100人以上が聴覚障害の身障者手帳を不正に取得していたことが明るみに出て、虚偽の診断書を作ったなどして、医師らが逮捕される事件が起きている。
ただ、遡って検査はできない以上、佐村河内守氏は本当に耳が聞こえたのかどうかは証明できないという。とはいえ、なぜ言葉が聞き取れるようになってから手帳の返納などをしなかったのかは疑問が残るとしている。
報道によると、佐村河内氏が住んでいる横浜市は、事実関係を確認したうえで、問題があれば身障者手帳の返納を求めると明らかにした。田村憲久厚労相も、14年2月12日の会見で、身障者手帳の取り消しなど適切な対応を取る必要があるとし、障害年金の受給条件を満たしていなければ返還を求めたいと述べた。