「デヴィ夫人」ことタレントのデヴィ・スカルノ氏(74)が東京都知事選を巡り、公職選挙法違反の疑いで警視庁から警告を受けていたと複数のメディアが報じた。選挙2日前の2014年2月7日、メールマガジンで都知事選に立候補していた田母神俊雄氏(65)への投票を呼びかけたことが原因だ。
一方でデヴィ夫人はほぼ同じ内容のブログも掲載しているが、こちらは法律上問題ない。インターネット上ではこうした公選法の取り決めに疑問の声もあがる。
「電子メール」利用は「候補者・政党等」だけ
元厚労相の舛添元要一氏(65)が当選を果たした今回の東京都知事選(2月9日投開票)で、デヴィ夫人は一貫して元航空幕僚長の田母神俊雄氏を応援してきた。街頭演説にも度々駆けつけ、大雪に見舞われた選挙前日もヘルメットをかぶりながら熱弁をふるった。
ブログも最近は田母神氏関連の内容ばかりで、2月6日には「皆さん『危機管理』のプロを都知事に そしてネットの皆さん、必ず投票所に行って下さい」などと呼びかけていた。その一環だったのだろう、デヴィ夫人は翌日の7日、今度は無料で配信しているメールマガジンでも同様の「お願い」をした。田母神氏と台風被害を受けた伊豆大島を視察に行ったエピソードを紹介し、タイトル、冒頭には「ネットの皆さん、『田母神としお』と書いて、必ず投票所に行ってください」と綴った。最後の一文でも「ネットの皆さん、必ず投票所に行って『田母神としお』と書いて下さい!」と念を押し、有権者に猛アピールしていた。
だが、このメルマガが問題となった。インターネット選挙運動の解禁後、電子メールを使った選挙運動用の「文書図画」の頒布が可能になったが、それができるのはあくまで「候補者・政党等」のみ。第3者である一般有権者の利用は引き続き禁止されているのだ。幸い今回は「警告」で済んだようだが、総務省の資料によると「違反した者は2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処することとされており、選挙権及び被選挙権が停止される」という。
TwitterやLINEならOKだった
一方で、デヴィ夫人は8日のブログにも「ネットの皆さん 必ず 投票所に行って下さい!」と一部表記を変えた程度で、メルマガと同じ文面を掲載した。だが、内容は同じであっても、このブログは法律上「セーフ」だ。ブログは電子メールと異なり「ウェブサイト等」の扱いになるため、該当ページにメールアドレス等の連絡先を表示すれば一般有権者でも選挙運動に利用することができるためだ。
そもそも電子メールは「密室性が高く、誹謗中傷やなりすましに悪用されやすい」「複雑な送信先規制等を課しているため、一般の有権者が処罰され、さらに公民権停止になる危険性が高い」「悪質な電子メール(ウィルス等)により、有権者に過度の負担がかかるおそれがある」といった理由から利用者が制限されている。
だが「ウェブサイト等」にはブログやホームページなどのほかに、TwitterやLINE、FacebookといったSNSも含まれている。これらのメッセージ機能を使ったとすれば、利用者の感覚としては電子メールとの境界線はほとんどない。また、「なりすまし」や「悪質な電子メール」といった問題が「ウェブサイト等」では起こらないか、というとそんなことはない。Twitterのなりすましなど日常茶飯事だ。にもかかわらず法律上「電子メール」が分類されていることについては、以前から疑問の声があがっている。
デヴィ夫人のメルマガへの「警告」も現行法上は仕方のないことではあるものの、読者側からしてみればどちらも同じ内容であり、得られる情報に変わりはない。インターネット上ではデヴィ夫人や周囲に対して「初歩の初歩だぞ。誰も注意してくれなかったのかね」と認識の甘さへの指摘があがる一方で、「Twitter、LINEなどは良くてメルマガはダメ??? 笑い話」「法改正論議のころからストンとこなかった規制部分」といった声も少なくない。