ソチ冬季五輪で日本人選手は健闘しているが、3日目までメダルには手が届いていない。女子モーグルの上村愛子選手は、銅メダル獲得寸前までいきながら最終滑走者の米国人選手の点数が上回ったため、惜しくも4位となった。
米選手は途中で体勢を崩したが、それでも上村選手より得点が高かった。日本のファンにとって納得いかない結末に見えたが、実は採点基準の変更が大きく影響していたのだ。
上半身がぶれない滑りで米選手が高評価
モーグル競技はターン、エア、タイムの3要素で競う。このうちターンは、雪上のコブをスムーズに滑るテクニックで、採点の割合の50%を占める。エアとタイムが各25%なので、最も重要と言えよう。
決勝3回目に残った6選手の採点で、上村選手はタイムでトップ、エア3位だったがターンは4位にとどまった。コブに弾かれることなく滑りきったにもかかわらずだ。一方、土壇場で上村選手を抜いたハナ・カーニー選手は第1エアを成功させた後で体が右側に大きく傾いた。その後の滑りもやや安定感を欠いたが、終わってみればターンの評価は上村選手より高かった。なぜなのか。
2014年2月10日放送の「とくダネ!」(フジテレビ系)に出演した長野五輪女子モーグル金メダリスト、里谷多英さんが謎解きをした。大きく影響したのが、採点基準の変更だという。近年は「(スキーが)スライドしても上半身が安定して動かず、下半身でスキーを巧みに操作するターン」が重要となり、米国やカナダの選手の間で主流となった。タイムは劣っても、上体がぶれにくいので高評価につながる。一方上村選手は、スキーのエッジ部分で雪面をとらえ、彫り込むように滑る「カービング」の技術が優れている。直線的に滑れるのでスピードが増す半面、上半身が揺れているように見えるという。2010年のバンクーバー大会ではカービングが最も重視されたが、その後は上体が安定しているかどうかも評価ポイントに加わったようだ。
里谷さんがもうひとつ指摘したのが「基準点」の存在。スタートから第1エアまでの間の滑りで審判が選手の基準点を決め、その後ミスがあれば減点していく方式なのだという。銅メダリストとなったカーニー選手の場合、上体がぶれない滑りとして基準点が高く設定されたようだ。そのため第1エアの着地後にバランスを崩して多少減点されたとしても、基準点が低くつけられた可能性の高い上村選手を総合点で上回ったとみられる。