安倍首相は発言を軌道修正
安倍首相は1月6日の年頭記者会見では原発の新増設について「現在のところ全く想定していない」と述べたが、1月19日のNHKの日曜討論では「建設中の大間原発や、建設がほぼ終わっている島根原発3号機は新増設のうちには入らないと思う」と軌道修正。「運転に向けた申請が出てくれば、原子力規制委員会でしっかりと審査していく」と述べた。民主党政権は「原発の新増設は行わない」と明確に否定したが、自民党政権は建設中の原発を含め、政治判断を先送りしている。
政府関係者によると、現行の法律(原子炉等規制法)では、原発の新増設は電力会社の判断しだいで、原子力規制委員会に申請し、許可を得れば運転できるという。もちろん、島根原発3号機のように、新たな原発を動かすには、原子力規制委員会の許可だけでなく、県知事など地元自治体の同意が必要となる。原発事故後に新たな原発を運転することには賛否両論があり、再稼動以上に安倍政権が慎重になっているのは事実だ。
国会では与野党の超党派の国会議員64人で組織する「原発ゼロの会」が原発の新増設を認めず、運転開始から40年で廃炉とする政府の原則を厳格に適用するよう求めている。これに対して、自民党の原発推進派議員で作る「電力安定供給推進議員連盟」は、原発の新増設やリプレースを政府のエネルギー基本計画に明記するよう求めている。
島根原発3号機や大間原発の運転を政府が認めれば、その後、少なくても国内で40年は原発が稼動することになり、世論の反発も予想される。安倍首相が唱える「省エネと再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、原発依存度は可能な限り低減させる」という基本方針に抵触することにもなりかねない。
電力会社にとっても既存原発の再稼動が最優先課題であり、建設中の原発については世論や政府の動向を見極めているのが現状だ。