任天堂が業績不振にあえいでいる。2014年3月期の連結業績が3期連続の営業赤字になる見通しだ。据え置き型ゲーム機「Wii U」の販売不振が主な原因。
オンラインゲームを楽しめるスマートフォンの浸透のあおりで、ゲーム機というハードを普及させてソフト販売で収益を確保するという事業構造も曲がり角を迎えている。
主力のWii Uの不振が大誤算
任天堂は2014年1月17日に記者会見を開き、今期の営業損益が1000億円の黒字予想から350億円の赤字になると、業績予想を大幅に下方修正した。円高不況にさらされた前期、前々期とは異なり、円安で自動車など他の輸出産業が復調する中での業績不振。それだけに事態は深刻で、29日には岩田聡社長が2~6月の5か月間の自身の報酬を5割カットし、他の取締役も2~3割減額することを明かにした。
業績低迷の原因は、主力のWii Uの不振に尽きる。年間販売台数は当初予想の900万台から280万台へと大幅に引き下げた。
その主因は、言うまでもなく手軽にオンラインゲームが楽しめるスマートフォンやタブレット端末の普及という市場の変化だ。任天堂を支えてきたゲームを短時間だけ楽しむライトユーザーがスマホに奪われる傾向にあるという。
「安価なゲーム機を普及させて、利益率の高いソフトを売るという任天堂のビジネスモデルが崩れつつある」(アナリスト)という声があるように、企業の存立基盤の揺らぎを指摘する向きもある。
しかし、据え置き型ゲーム機が全くダメというわけではない。2013年11月に発売されたソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション(PS)4」やマイクロソフトの「Xbox One」は欧米市場を中心に好調で、販売台数も年末までにそれぞれ420万台と300万台を達成した。出足好調なライバル勢とは対照的に任天堂の独り負けが際立っている。「敗因は他社に比べ魅力的なソフト投入ができなかったからの一言に尽きる」(業界筋)というように、業界の構造問題と一線を画す声も多い。
魅力あるソフトを投入できるか
苦境に直面する任天堂は1月30日に経営方針説明会を開催した。新たなビジネスモデルの提示があるかどうかが注目されたが、岩田社長は「ハードとソフト一体型のプラットフォームは今後も経営の中核」と強調した。要するに、従来のビジネスモデルを維持するということだ。
説明会では健康関連事業に乗り出すことも発表されたが、注目されていたスマホとの連携については、任天堂ゲームの認知度向上のためにアプリを通じてスマホを活用すると述べるにとどめ、ゲームソフトの提供はないと説明した。
新たな収益モデルの提示がなかったことが失望され、この日の東京株式市場で任天堂株は前日終値比555円安の1万2325円と一段安になった。「ファミリーコンピュータ」の発売以来、業界を牽引してきただけに市場の関心も高い。業界では「ハードが売れないのでソフト開発も進まないという負の連鎖に陥っている。これからどう立て直すかが見もの」との声も聞こえてくる。業績好転はやはり魅力あるソフトをいかに投入できるかにかかっている。