金融庁と総務省は、日本郵政傘下のかんぽ生命保険が申請していた学資保険の新商品の販売を認可した。かんぽ生命の新規業務は改正郵政民営化法の成立後では初めてで、新商品は4月から販売される予定だ。
日本郵政は来年春にも株式上場を目指しており、今回の認可はグループの収益力向上の一環として期待は高い。ただし、ゆうちょ銀行の住宅ローン進出などのめどが立たないなど、日本郵政が抱える課題は依然大きい。
TPP交渉も影響していた
かんぽ生命が新商品の認可申請をしたのは2012年9月で、当初は2013年4月の発売を目指していた。しかし、申請直後の2012年11月、かんぽ生命による保険金支払い漏れが発覚、金融庁と総務省はこれを問題視し、支払い漏れの解消や再発防止策が進まない限り、認可はできないとの姿勢を示していた。今回の認可はこうした対策が着実に実施されているとの判断が背景にある。
認可には環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉を巡る日米協議の動向も影響した。米国が自国の民間企業の業務が圧迫されるとして、郵政事業の拡大を懸念、かんぽ生命の新規事業をけん制したためだ。ただ、日本郵政と米保険大手アメリカンファミリー生命保険(アフラック)が昨夏、提携を拡大することで合意、アフラックのがん保険を全国の郵便局で販売することを決めたことで米国の姿勢が軟化し、認可の環境が整ったとされる。
ようやく認可され安堵
紆余曲折を経てようやく認可を得ることができたかんぽ生命の新商品。日本郵政は、かつての主力分野だった郵便事業がインターネットの普及や少子高齢化の影響で取扱量の減少に苦しむ中、銀行や保険事業の比重が高まっている。特に、学資保険はかんぽ生命の年間保険契約数の約1割を占める商品でもあり、ようやく認可されたことに安堵しているというのが正直なところだ。日本郵政の西室泰三社長は認可後の記者会見で、「顧客の利便性向上につながり、経営の安定化に資する」と歓迎を示した。
ただ、今回の認可によって日本郵政グループの将来に光がさしたとはいえないのが現状だ。かつて、学資保険市場で5割超のシェアを占めたかんぽ生命も、民間保険企業の台頭で現在は約3割まで低下している。一方、事業拡大が期待される傘下のゆうちょ銀行についても、2012年9月に申請している住宅ローンやカードローンなどの新規事業は「検討課題が多い」として認可のめどが立っていない。日本郵政は政府が全額出資しており、民間金融機関から「公正な競争を阻害する」などの批判が強いことが影響しているとされる。
早期の株式上場を目指す西室社長は「我々が努力していることを認めてほしい」と強調するが、先行きはなお不透明感に覆われている。