政府の財政見通しの試算が明らかにされ、議論を呼んでいる。マスコミなどが一番注目し、いわば政府の「公式見解」ともいうべきものが、2014年1月20日の政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)に示された。
今後10年間の国と地方の基礎的財政収支(PB)の見通しで、これでも2020年のPB黒字化という中期目標は達成できないというものだが、それ以上に悲観的な試算もある。アベノミクスで経済に明るさが出てきたとはいえ、改めて日本の財政の厳しさを思い知らせるものと言えそうだ。
悪いケースだと2020年度赤字17.4兆円
諮問会議に内閣府が提出した見通しは、今後10年(2013~2022年度)の平均成長率を、名目3%、実質2%とし、消費税率の2段階目の引き上げ(2015年10月から10%)も実施する前提で、2015年度の国と地方のPBの赤字は16.4兆円程度、国内総生産(GDP)比で3.2%程度になり、2010年度の6.6%から半減するという財政健全化目標は達成する見通し。ちなみに、13年8月時点の試算ではGDP比3.3%だったので、景気回復で法人税収などの増加が見込まれて赤字幅はやや圧縮された。だが、2020年度でも赤字が11.9兆円程度、GDP比1.9%程度となり、黒字化目標を達成できない。
実は、あまり報じられていないが、この試算には、「内外経済がより緩やかな成長経路」となった「参考ケース」(向こう10年が名目2%、実質1%成長)の数字もある。それによると、PBは2015年のGDP比は3.3%にとどまるが、2020年度は赤字17.4兆円、GDP比3.1%と目標に遠く及ばない事態になる。