ビールの消費量低迷に歯止めがかからない。
ビール大手5社がまとめた2013年のビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)の課税出荷量は前年比1.0%減の4億3357万ケース(1ケース=大瓶20本換算)で、1992年に現行の統計となって以降では、2005年から9年連続で過去最低を更新した。
台風など天候不順が響く
昨年は1~3月が大雪や低温などの影響で不振だったが、4月以降は天候に恵まれて好調に転じた。梅雨明けも早く、7月には猛暑続きで需要も伸び、業界には「最も消費量が多い夏場の結果次第で前年実績を更新できるかもしれない」との期待が膨らんだ。ところが、その後は台風など天候不順が響き、業界の思惑通りには進まなかった。
酒類別では、ビールが1.7%減の2億1668万ケースで、高い価格帯のプレミアムビールや贈答品は売れたが、主力の家庭向けが不振だった。発泡酒に至っては6.3%減の5868万ケース。その一方、低価格が売りの第3のビールは2.0%増の1億5819万ケースと好調を維持し過去最高を記録した。全体に占める割合もビールの50.0%、発泡酒の13.5%に対し、第3のビールは36.5%で過去最高を更新し、存在感は増すばかりだ。
会社別シェアは、アサヒビールが37.6%で4年連続のトップ。以下、キリンビール34.8%、サントリー酒類14.7%、サッポロビール12.0%と続き、前年順位と変化はなかったが、キリンビールだけがシェアを落とした。
消費増税で今年も厳しい
消費量低迷が続くビール業界。その原因は天候不順や少子高齢化による市場縮小だけではない。若者や女性のビール離れが急速に進み、ワインやハイボール、缶チューハイなどの人気が高まるなど嗜好が多様化。2014年は4月の消費税増税が追い討ちをかけるとみられ年間出荷量は「一段と落ち込み、10年連続で前年割れとなる公算が大きい」(大手メーカー)との見方が大勢を占める。
苦境に直面する各社だが景気の回復傾向などを受け、「縮小する市場で唯一、成長の余地がある」とプレミアムビールの販売を強化する。この分野はサントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」やサッポロの「エビス」が先行するが、アサヒとキリンが「ドライプレミアム」「一番搾りプレミアム」をそれぞれ投入して追撃する。
各社とも多額の販促費をかけ、プレミアムビールでのシェア獲得を狙う考えだ。ただ、業界内には「消費税増税で節約志向が一層高まり、期待したほど伸びないのではないか」との指摘もあり、結局は第3のビールや缶チューハイなど手ごろな価格帯の商品に人気が集中するのでないかとの見方が広がっている。