日本とトルコは2014年内にも、経済連携協定(EPA)交渉を開始する。中東と欧州の接点に位置し、北アフリカにも近いトルコは高い成長が見込める魅力的な市場だ。EPAを足がかりに、日本企業によるトルコ進出に弾みがつくよう期待されている。
EPAの交渉入りは、1月初旬に行われた安倍晋三首相とトルコのエルドアン首相との会談で合意された。両首相は昨年5月の会談でEPAの検討作業を加速化することを確認し合っていた。
GDP、世界のトップ10入り目指す
トルコは親日国であるうえ、約7800万人と豊富な人口を抱え、混迷する中東地域の中でも安定した成長を遂げている国だ。成長余力は高いとみられ、国内総生産(GDP)は現在の世界17位から、2023年にはトップ10入りを目指している。
日本にとっての大きな魅力は、トルコそのものの成長力に加え、トルコが持つ「地の利」がある。トルコは中東と欧州が接する地点にあり、欧州連合(EU)とは関税同盟も締結している。EPA締結で関税撤廃や規制緩和が進めばトルコ向け輸出拡大が見込めるうえ、日本企業がトルコに先端部品を輸出し、トルコで製品に組み立ててEU諸国に輸出すれば、関税面でも大きな利点がある。
また今後、急成長が見込まれる北アフリカや湾岸諸国向けに、トルコを拠点とした輸出拡大も見込むことができ、日本企業はトルコを巨大な輸出拠点に育てたいとの期待も高まっている。
すでに100社以上の日本企業が進出
日本の経済界は従来からそんなトルコに熱い視線を送っていた。トヨタ自動車やホンダなど既に100社以上の日本企業がトルコに進出しており、大規模な工場を設けたり、大成建設がボスポラス海峡の海底トンネル事業を完成させたりするなど、ゼネコン各社がインフラ建設などを担っている。
経団連もトルコとの経済関係強化を求め、昨年12月にはEPA交渉の早期開始を求める緊急提言を公表、「包括的かつ高水準の経済連携の実現を」と呼び掛けてきた。韓国とトルコの自由貿易協定(FTA)が同5月に発効し、韓国企業が優位に立ったことで、日本企業の焦燥感も募っている。
ただ、トルコ自体にリスクがないわけではない。エルドアン政権が発足した2003年以降、トルコ経済は旺盛な消費や投資が成長につながってきた。しかし海外からの借り入れで資金を賄ってきたため、米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和の縮小により資金流入が止まれば、成長を揺るがす可能性がある。
実際、過去10年で平均5%を維持してきたGDP成長率も2014年には減速が避けられない見通しだ。足下では閣僚の汚職疑惑の拡大で反エルドアン政権の動きも活発化するなど政情の不安定化も懸念され、通貨リラが急落している。日本政府がそうしたリスクをどう見込んで対応するかも大きな課題だ。