初乗り500円の「ワンコインタクシー」などの格安タクシーが2014年4月以降、なくなる。
タクシー運賃の引き上げや減車を事実上義務付ける、特定地域におけるタクシーの適正化・活性化に関する改正特別措置法(タクシー「サービス向上」「安全利用」推進法)が1月27日に施行されたためだ。タクシー会社は、国が定めた範囲内で運賃を決めなければならないなど、規制が強化された。
「公定幅運賃」の範囲内でなければダメ
4月以降、東京都内から「格安タクシー」がいなくなる…(写真はイメージ)
タクシーの運賃は地域によって異なる。東京都23区と三鷹市、武蔵野市の場合、小型車も中型車も初乗り(2キロメートルまで)は710円で、それ以降は288メートルごとに90円が加算される。
現在、ほとんどのタクシーがこの料金で走っているが、一部では640円(小型車)や660円(中型車)、500円のワンコインタクシーもみられる。それが4月以降は、「680円」を下限とする運賃で営業しなければならなくなる。
大阪市内で普及している「ワンコインタクシー」も運賃の下限が660円なので、3割超の値上げを迫られる。
石川県金沢市内は全国的にも料金格差が大きい地域で、小型タクシーの初乗り運賃(1.7キロ)は、560円、620円、660円、690円の4通りある。それが4月以降、最も安いタクシーでも660円を上回る見通しで、「560円」「620円」に設定しているタクシー会社は運賃を値上げしなければ、国から運賃の変更を命じられる。
現在のタクシー運賃は、運輸局が示す上限と下限の範囲内からタクシー会社が選ぶ「自動認可運賃」で、金沢市内では660~690円に設定されている。ただ、2008年までは560~630円だったため、過去の料金を据え置いたまま運行を続ける会社があるわけだ。
国土交通省自動車局は、「(自動認可運賃の場合は)運輸局が認めているのであれば、問題はありません」という。しかし、4月以降に導入される、新たな「公定幅運賃」では、運輸局が示す範囲外の運賃は認められなくなる。
東京都内の場合、現在の自動認可運賃は680円~710円。国交省自動車局は、「消費税率の変更があるので、それがそのまま『公定幅運賃』になるとは限りませんが、それ(自動認可運賃)が目安にはなります」と説明する。
どうやら、4月以降の公定幅運賃の導入後に「680円」を下回る、格安運賃のタクシーが、東京都内からなくなることは確実のようだ。
利用者不在? 新規参入も認めず、価格競争も起こらない
今回のタクシー運賃の規制は、タクシーの供給台数が過剰であると国が判断した地域が対象で、東京都内や大阪市のほか、札幌や仙台、福岡など地方の中核都市の多くが含まれる。
これらの地域では4月以降、国が運賃の上限と下限を決め、現行運賃がこの範囲より安いタクシー会社は値上げしないと営業できなくなる。値上げに応じない場合には、「運賃の変更を、国土交通大臣が命じることができる」というのだから、価格競争など起こりようがない。
運賃以外にも、新規参入や増車を禁止、強制的な減車規制(独占禁止法の適用除外)などの規制も敷いた。
そもそも、企業が創意工夫を重ねて競い合い、そこで敗れたプレーヤーが退出することで需給が均衡するのが市場競争のはず。それらを放棄して国が運賃を決めたうえ、ただ消費増税分を値上げするのでは、利用者が減っても仕方がないかもしれない。