北朝鮮では2013年末の張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長の処刑に続いて、一族の処刑も伝えられた。このように国内の締め付けを強める一方、韓国に対しては誹謗(ひぼう)中傷を互いに中止するように求めるなど、急に融和姿勢を鮮明にしている。
この融和路線の舞台になりそうなのが、金正恩第1書記の肝いりでオープンした馬息嶺(マシクリョン)スキー場だ。北朝鮮は馬息嶺スキー場を利用して18年の平昌(ピョンチャン)冬季五輪の共同開催を提案しており、この点についてテレビ番組で言及した、プロスキーヤーで登山家の三浦雄一郎さん(81)に対して北朝鮮側から「ぜひ来てください」と連絡があったというのだ。
互いに誹謗中傷をやめるように呼びかける
聯合ニュースは14年1月26日、北朝鮮の消息筋の話として、張氏の一族が大々的に処刑されたことを伝えている。正恩氏の指示で「直系親族は全員処刑された」という。
半面、1月16日には、北朝鮮側は国防委員会の名前で1月30日から互いに誹謗(ひぼう)中傷をやめるように呼びかけてもいる。この呼びかけでは米韓軍事演習の中止を求めていたこともあって、韓国側は1月17日には「これまで誹謗中傷を続けてきたのは北朝鮮」と一度は一蹴した。だが、北朝鮮側が1月24日に発表した公開書簡で、誹謗中傷の中止に加えて南北離散家族の面会を提案すると、韓国側も「歓迎する」と態度を軟化させた。
この融和外交が続くとすれば、その舞台になりそうなのが13年12月にオープンしたばかりの馬息嶺スキー場だ。18年に韓国・平昌(ピョンチャン)で予定されている冬季五輪では、雪不足や地形の問題でスキー場の建設が難航するとの見方も出ており、13年9月には、北朝鮮当局者が共同通信などの日本メディアに対して
「要請があれば、スキー場を五輪会場として提供する用意がある」
などと述べている。最高齢でエベレスト登頂を果たした三浦雄一郎さんも、14年1月19日夕方に日本テレビで放送された「真相報道 バンキシャ!」で、スキー場建設は五輪の共催を当て込んでいる可能性を指摘。この発言に、北朝鮮側が敏感に反応した。
次男「早速『ぜひ来てください』という反応が…」
この日の番組では、日本維新の会のアントニオ猪木参院議員の現地視察の様子を報じていた。取材VTRが終わると、三浦さんは、
「いや~、行ってみたいですね。スキー場のスケールからしても国際的なスケール」
と感嘆した様子で、平昌五輪にも触れて
「滑降、スピード系のコースで韓国が困っている。ひょっとしたら、北朝鮮と南北共催。そういった狙いもあるのではないか」
と話した。この放送を北朝鮮当局がチェックしていたようだ。次男の三浦豪太さんが1月17日昼にTBSで放送された「ひるおび!」で、
「父が、ここ(馬息嶺スキー場)と一緒に韓国とのオリンピックを一緒にしたらどうだという発言をしたところ、早速北朝鮮から反応があり、『ぜひ来てください』という反応が…」
と明かしている。
三浦さんに招待状が届いたかまでは明らかではないが、北朝鮮当局が南北共同共催に大いに関心を持っていることは間違いない。