西武鉄道、4月再上場に向かって動き出す サーベラスとの和解はアベノミクスのせいだった

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   西武鉄道やプリンスホテルを傘下に持つ西武ホールディングス(HD)が10年の時を経て株式の再上場に向かって一歩踏み出した。

   経営方針をめぐり対立してきた筆頭株主の米投資会社サーベラスと和解し、2014年1月15日、東京証券取引所に上場を正式に申請した。早ければ4月の上場を目指しており、「昨年上場したサントリー食品インターナショナルに匹敵する案件で、売り出し価格は数千億円規模」(証券アナリスト)との観測が広がっている。再上場について、西武HDも「経営の最重要課題」とするというコメントを発表。2004年の上場廃止からの経営再建の道のりも最終段階にさしかかった。

対立表面化は、西武が12年10月に上場申請した時から

西武がまた走り出す
西武がまた走り出す

   西武HDの前身の西武鉄道は2004年12月に有価証券報告書の虚偽記載で上場廃止になった。2005年に西武グループを率いていた堤義明氏が証券取引法違反容疑で逮捕されるにおよび、経営立て直しの重責を担って、メーンバンクのみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)副頭取だった後藤高志氏が西武鉄道社長に就任。2006年にサーベラスが約1000億円を出資し、傘下に鉄道やホテル、不動産事業を持つ西武HDが発足し、そのトップにも後藤氏がそのまま就いた。

   西武はサーベラスとともに再建を進め、業績も着実に回復させていったが、投資ファンドとして投資資金を高額で売り抜けたいサーベラスには、「企業価値の向上」、すなわち株価を高くする上で、西武の歩みはあまりに遅いと映った。

   両者の思惑にズレが表面化したのは、西武HDが2012年10月に上場申請した時だ。株式売り出しの仮算定価格がサーベラスの想定より低い1200~1500円程度と見積もられていたため、サーベラスが納得せず、スティーブ・ファインバーグ最高経営責任者(CEO)名で50項目に及ぶ要求事項を書き連ねた手紙を後藤社長に送付した。

沿線自治体やスポーツ界を巻き込んだ騒動に発展

   経営改善要求には、西武鉄道の5路線を「不要路線」、プロ野球の埼玉西武ライオンズを「売却の選択肢」などが含まれていたため、西武側は「到底受け入れられない」と反発し、手紙を公表。両者の対立は沿線自治体やスポーツ界を巻き込んだ騒動に発展した。結局、西武はこのあおりで、上場の先送りに追い込まれた。

   これ以降、サーベラスは西武の経営権取得に動いた。議決権の32%を保有していた2013年3~5月、株式公開買い付け(TOB)を実施し、議決権比率を約45%まで高めようとしたのだ。しかし、一部鉄道路線廃止を懸念する地元自治体などに加え、他の株主が反発。結局、サーベラスの保有比率は目標に遠く及ばない約35.5%にとどまりTOBは失敗。6月の株主総会でもサーベラスが提案した取締役選任議案は否決された。

サーベラスは売り抜けるチャンスと判断

   これで、西武経営陣とサーベラスの関係はこう着状態になったが、緊張関係が続く中でも上場に向けた協議は続けられた。

   両者の距離を縮めたのは、それぞれの努力や歩み寄りではなく、アベノミクスだった。サーベラスはTOBを含め西武に約1200億円を投じているが、これは投資家から集めたカネで、「塩漬け」にしているわけにはいかない。安倍晋三政権誕生後の好調な株式市況の中でなら、公開株価もサーベラスが目論んだと言われる1株2000円前後に近づくことが見込め、売り抜けるチャンスと判断し、上場申請を容認したとみられる。2020年には東京五輪開催を控えてホテル業界などの見通しも明るくなっており、西武HDの業績も上向く期待も、サーベラスの路線転換を後押ししたようだ。

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