金融庁が保険代理店の規制強化へ 街の「乗り合いショップ」も変わる

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   金融庁が、保険を販売する全国の「代理店」に対する「監督指針」を変更し、規制を強化する。2014年1月16日に公表した改正案のポイントは、代理店と雇用関係にない「募集人」と呼ばれる人に代理店が販売委託(保険会社から見ると「再委託」)することの扱いだ。

   「再委託」は法令違反だが、これまでは研修を受けさせることで黙認してきた。しかし、募集人は給料が固定給でないことが多く、手数料を高く得られる商品を優先的に客に勧める恐れなどが指摘されていた。このため、代理店の正社員や派遣社員などに販売を限るよう厳格化する方針を打ち出した。

「ほけんの窓口」が急成長

「ほけんの窓口」WEBサイト
「ほけんの窓口」WEBサイト

   金融庁が代理店の規制強化に踏み切る背景には、「ほけんの窓口グループ」に代表される、複数の保険会社の商品を取り扱う「乗り合い」の来店型ショップの成長がある。なかでも全国に約470店を展開する大手の「ほけんの窓口グループ」は、過去5年で約5倍に店舗を増やしているほどの成長株だ。

   従来、生命保険と言えば、「営業職員」と呼ばれる女性部隊がさまざまな職場に入り込み、結婚を控えた若手社員らを勧誘して「定期付き終身保険」などに入ってもらう、というのが主要な顧客獲得手段だった。しかし、セキュリティー強化で営業職員が一般企業の社員に接触することは年々、困難になっている。

   一方、営業職員との接触が断絶されていても「保険に入りたい」または「他社の保険に乗り換えたい」と考える人は少なからずいる。インターネットを通じて商品を選んで購入する人もいるが、加入期間が長期にわたる高価な商品もあるなど、加入者にはそれなりの知識も必要なため、まだ少数派。実際に話を聞いてみたい、というニーズをすくい上げたのが「ほけんの窓口グループ」などの乗り合いショップだ。

   ただ、「乗り合い」と言っても、保険会社が支払う手数料は一律ではないため、固定給が得られる代理店の正社員ならまだしも、成功報酬型の募集人は手数料の高い保険会社の商品を勧めがちで、かつ過剰な契約を勧める恐れがある――との指摘が業界内でもあり、雑誌などに、そうした記事がここ数年、しばしば掲載された。

外資系や新興生保の有力チャネルがしぼむ

   実際の消費者の被害例は今のところ報告されていないが、販売手法を含めて保険商品を監督する金融庁としては、被害を未然に防ぐ観点から、規制に乗り出す方がいいと判断したわけだ。

   では規制強化で何が起こるか。商品知識の不足も指摘された「募集人」が禁止されることで、消費者にとっては保険商品を買う際に納得のいく十分な説明を受けることが期待できる。「乗り合い」ショップにおいても、より中立的な商品の提案がされる期待も高まる。

   ただ、乗り合いショップにとっては募集人の正社員化などを迫られ、現状よりコスト高の経営を強いられそうだ。これまで順調に成長してきたが、さらなる成長どころか、現状維持も難しくなる可能性もある。そうなれば、消費者にとっては、保険選びの手段が減るとこになる可能性もある。

   生保側にとっては、営業職員など従来からの自前の販売チャネルを持つ大手は乗り合いショップが少しくらい減っても大きな影響はないが、自前の営業部隊に乏しい外資系や新興生保にとっては、有力チャネルがしぼむことにもなりかねない。

   規制は2015年3月末までに完全実施される方向。結果がどう出るか、業界関係者ならずとも注目だ。

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