「助けて、マー君!」 名門ヤンキース、破格契約金の裏事情

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   やっと決まった田中将大の大リーグ行き(2014年1月23日)。ヤンキースの条件「7年、1億5500万ドル(約161億円)」を選んだ。名門球団がペナント奪回のために勝負に出た格好で、まさか米国から「助けて」と言われるとは……。

プレーオフ出場逃し、なりふり構わぬヤンキース

   この契約は投手では史上5番目だという。むろん日本選手ではダントツ。これまでのビッグ契約は松坂大輔とレッドソックスの「6年、5200万ドル」とダルビッシュ有とレンジャースの「6年、6000万ドル」。田中はそれをはるかにしのぐ破格なものだった。

   「(目標は)世界一になること」と田中。そして「戦力になるために行く」と自信のほどを示した。

   ヤンキースのキャッシュマンGMは「(田中を)プロ入りしたときから関心を持っていた。毎年力をつけてきた」と振り返り、高額契約については「素質にはそれなりのものを払う」。

   現地から得た情報によると、ヤンキースはなりふり構わない戦略だったという。昨年はプレーオフにも出場できない完敗。選手がロートル化したのが最大の敗因で、さらにデレク・ジーターやアレックス・ロドリゲスといった高給取りが役に立たなかった。ロドリゲスに至っては薬物問題で完全アウトの状態だった。ロドリゲスは今シーズンの「出場停止」が決まっており、その年俸2100万ドルが田中に回った。

   田中はヤンキースを助けるために海を渡る。勝利を呼ぶ男として飛び込むわけで、期待もプレッシャーも大きい。ヤンキースのファンは全米でもっとも厳しいといわれており、敗戦が続いたらコテンパンにたたいてくることは目に見える。

   最初のマウンドは大変な注目を集めるだろう。日本の選手は開幕に最高のコンディションに持っていく習慣が身についている。一方大リーガーは、4、5月は調整中で気温が上がるに従って調子を上げ、夏場にベストとなる。だから田中が初戦で勝てる可能性は高い。

   先のことを考えると、早い時期に1敗した方がいいと思う。「無敗の投手」の重荷を降ろせば本来のピッチングを続けることができるだろう。ただ連敗はいけない。

   田中が昨年通りのピッチングを大リーグでも再現できるとは、専門家はだれも思っていない。なかには「昨年は敗戦と思われる試合は5試合ぐらいあった」との指摘もある。つまり実質は20勝ぎりぎりだったと見られている。

   勝負をかけたのはキャッシュマンとみていい。大リーグではGMも契約。今季も不調だったら「クビは確実」といわれている。投手に7年契約というタブーの長期契約を提示したのだから驚く。ヤンキースといえば米国のスポーツの象徴。チーム立て直しを日本投手にお願いしてきたのだから時代は変わった。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)

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