キリンビールはテレビ放送中のカエルのキャラクターを使った缶チューハイ「本搾り」のCMやキャンペーンを2014年1月24日で中止、終了すると公式ホームページ上で発表した。アルコール問題を扱う団体から、未成年者の関心を引き飲酒に誘導しかねない、などといった指摘を受けたからだという。
カエルの着ぐるみが問題だったようなのだが、ネットではこのカエルは子供受けするキャラとは全く思えないのにCMを中止するなんて「モンスタークレーマー増えすぎ」などと異論が出ている。
また、大人気ゆるキャラがお酒のキャラとして発売されていることを指摘し、「くまモンやバリィさんは大丈夫か?」といったファンの心配が出ている。
未成年にアピールするキャラやタレントを起用はダメ
キリンが中止するのは14年1月17日から放送している、俳優の大沢たかおさんとカエルの着ぐるみが掛け合いを行うCM。タキシードを着た偉そうなカエルが「大事なことはひっくりカエルこと。一度ひっくり返ればわかるよ、タ・カ・オ」と「本搾り」をPRしている。このカエルの不遜な態度に少しイラッとする視聴者もいる。キリンは24日に公式ホームページで、「カエルのキャラクターを使用した表現方法が、アルコールを取り扱う会社として不適切であるというご指摘を頂戴しました。そのご指摘を真摯に受け止め、1月25日より広告出稿を中止することといたしました」。CMは当初26日まで放送しその後続編を流す予定だった。そしてカエルを演じている声優を当てるキャンペーンへの応募も30日から24日までに切り上げて締め切ることにした。
今回のCMや広告のなにがダメだったのか。酒類の広告審査委員会や日本洋酒酒造組合、東京小売酒販組合といった業界団体に問い合わせてみたところ、未成年にアピールするキャラクターやタレントは起用してはいけない、という自主規制に抵触する可能性があったのでは、と説明した。ただし、キリンの「本搾り」のCMがそれに当てはまる、といった噂や意見は一切聞いたことがなかったと担当者は口を揃えた。ある担当者は、
「そのキャラクターが未成年者にアピールするものであるかどうかは、判断がとても難しいです」
と語った。
「くまモン」「バリィさん」は大丈夫か
つい先ごろもANAの新CMで、お笑いタレントの「バカリズム」が金髪で高い鼻のメイクで登場したことについて「人種差別だ」と外国人から苦情が来て謝罪したが、ネットでは「モンスタークレーマー増えすぎ」などと批判が出ている。「本搾り」に出てくるカエルにクレームをつけるのは異常だとし、
「なぜこれが未成年の飲酒を誘発するって話になったんだ?」
「かわいいカエルかと思ったら、気持ち悪い系のカエルじゃん。バカじゃねぇの」
「最近ちょっとテレビもCMもクレーマーの言うこと聞きすぎじゃないの?いくらなんでもひどすぎる」
などといった意見が出ている。
その一方で、心配されているのが「くまモン」「バリィさん」といった地方のゆるキャラが日本酒や焼酎のキャラクターとして使用され、販売されていることだ。あのカエルがダメならば、こちらはもっと許されないのではないか、とし、
「くまモンの酒を買って楽しんでいるけれども、販売中止になったら困る」
などと語っている人もいる。
愛媛県と熊本県それぞれの酒造メーカーに話を聞いてみたところ、これまで苦情らしきものは一件もきていない、とした。愛媛県の酒造メーカーは、
「バリィさんは今治市が生んだキャラクターで、皆さん大切に思っていますし、もっと活躍の場があればと願っています。その一つが私どものお酒ですし、それは誰もがわかっていることです。それに、うちはCMは流していませんしね」
と打ち明ける。「くまモン」の熊本県の酒造メーカーに話を聞くと、「くまモン」関連の酒は様々なメーカーが作っていて、販売に際しては未成年者の飲酒を誘うことになりはしないか、業界団体を交えて慎重に調査、議論してきたのだという。そして、「くまモン」はキャラクターとしてだけでなく熊本県の営業部長だから積極的に使うべきだとの結論に至り、順次酒造メーカー各社が販売を始めたということだった。今回のキリン「本搾り」の余波を受け、今後クレームの様なものがあるかもしれないが、業界結束のもとで理解していただくしかない、とメーカーの担当者は話している。