妻への暴行容疑で、米国で逮捕された昨季のプロ野球本塁打王、ウラディミール・バレンティン選手。保釈は認められたものの無罪放免となったわけではなく、今季の日本でのプレーに影響が出ることは必至だ。
「腕をつかんだだけで逮捕とは」と、米国の法規制の厳しさが注目されたが、週刊誌では妻がバレンティン選手の不倫を暴露した。その妻も評判はあまり芳しくなく、離婚を巡る夫婦の泥仕合と化してきた感がある。
「女性関係を指摘すると逆上」「男友達にしなだれかかる」
これまでの報道を総合すると、監禁と暴行の容疑で逮捕されたバレンティン選手だが、家族に暴力をふるった過去はなかった。妻のカルラ夫人はテレビのインタビューで「今回が初めてだった」と語っており、当日その場に居合わせたおばも「ナイスガイだった」と口にしていたようだ。
当日何が起きたのか、夫婦ともども「裁判中」を理由に語ろうとはしない。夫人は、バレンティン選手が「なぜ怒っていたのか、動機も理由も全然話してくれなかった」が「私と話したかった。子どもたちにも会いたかったのだろう」と推測した。だが単なる家族訪問でなかったことは、経緯を見ても明らかだ。
バレンティン選手の逮捕騒動は、ジャーナリストの三山喬氏が「週刊文春」2014年1月23日号、1月30日号の2週に渡って詳述している。カルラ夫人から「夫との確執のすべてを話したい」と連絡を受け、米フロリダ州の自宅を訪れていた時にバレンティン選手本人がやって来たという。「大立ち回り」を演じた背景には、夫婦間のイザコザが影を落としていたようだ。
夫人の証言によると、バレンティン選手には愛人の存在があったという。2013年春ごろから夫婦仲がこじれた原因は、同選手の不倫だとの主張だ。「LINE」で女性関係を指摘すると逆上し、罵詈雑言のメッセージを投げつけてきた、その後は女性とのツーショット写真を見せつけるかのように送ってきたり、ビデオ通話で生活費の送金を求めると、「今ここで裸になるなら送ってやる」と要求したりと、嫌がらせがエスカレートしていった、などと訴えたそうだ。
半面、三山氏は夫人の態度にも疑問を感じたという。バレンティン選手の故郷キュラソー島で裏付け取材をすると話すと頑なに抵抗し、インタビュー翌日に突然「話はなかったことにしてほしい」と通告してきたことに不自然さを感じた。バレンティン選手の家族に話を聞くと、夫人を「ヘビ女」呼ばわりして嫌悪感を隠さない。逮捕騒動について夫人は、警察に通報したのは「絶対に私ではない」と言い張った、以前夫人が男友達にしなだれかかる写真を見たことがある、などと暴露。家族を巻き込んだ夫婦間の罵り合いを、三山氏は「どっちもどっちの泥仕合」と評した。
有罪ならヤクルトも連れて来られないのでは
バレンティン選手の今後については、米国時間1月24日に開かれる裁判がカギとなる。この日、日本への出国を認めるかどうかの判断が下される見通しで、許可が出れば2月1日のキャンプインには「滑り込みセーフ」となる可能性が高まる。
所属球団の東京ヤクルトスワローズは、これまで一貫してバレンティン選手がキャンプ初日に間に合うようにと動いてきた。逮捕の報が届くと奥村政之編成部国際担当次長を現地に派遣し、謝罪会見に同席させた。会見を受けて衣笠剛球団社長は、「1日も早く日本に来てキャンプに合流してほしい」と報道陣に語った。現場を統括する小川淳司監督は、来日すれば1軍スタートにすることをスタッフ会議で確認している。
ただスポーツジャーナリストの菅谷齊氏は、「球団側も頭が痛いのではないか」と推測する。戦力としては、昨季60本塁打を放った4番打者としてもちろん必要だ。だが、暴行容疑で逮捕された事実は動かない。現状では、24日の裁判が最大の焦点だとみる。「仮に起訴され、有罪判決が出たらヤクルトとしても日本に連れて来られないでしょう」。一方で疑いが晴れれば、チームへの合流が多少遅れても心配ないと話す。中南米出身だけに、キャンプ前半の寒い時期はあまり体が動かず、暑い時期に調子を上げてくるというわけだ。
しかしフィジカル面は補えても、メンタル面への影響がないとは言えない。夫人との離婚裁判は今後も継続し、心理的な負担がのしかかってくる。シーズン中に出廷を求められて渡米せざるを得なくなるかもしれない。日本行きが許されたとしても、後からいろいろな壁が立ちふさがってきそうだ。