ゆっくり滑りの発生間隔は過去最も短い
論文によると、ゆっくり滑りにより必ず巨大地震が発生するとは限らない。ずれ動いた先に、地震を引き起こすのに十分な弾性ひずみエネルギーが蓄えられている必要がある。この論理なら、今回房総沖でゆっくり滑りが起きているからといって、蓄積されたエネルギーが少なければ大地震にはつながらない。
小原教授は、「週刊女性」2月4日号のインタビューにこたえている。東日本大震災では地盤が40センチ動いたといい、房総沖のずれと比べて格段に大きい。ただ、この数値だけで地震の規模は推定できないそうだ。プレートの間でどのくらいの負荷をためこんでいるか、それ次第なのだという。また「時期は予想できません」と前置きしつつ、場所については「東北や南海トラフではなく、千葉県沖で間違いない」と明言していた。首都地震が現実味を帯びてきたというのか。
国の中央防災会議の作業部会は2013年12月19日、M7級の首都直下地震が発生した場合の被害想定をまとめた。死者は最悪で2万3000人、経済被害は95兆3000億円、全壊・焼失する建物は最大61万棟に上るとの推計だ。M7級地震は「30年以内に70%」の確率で起こるとされている。これだけでも相当な損害だが、「週刊現代」1月18日号では「想定が小さすぎる」という専門家の主張を掲載している。
例えば東京ドームのような「大規模集客施設」や、東京・新宿駅をはじめとする「ターミナル駅」、加えて「地下街」では、利用者が大勢滞留した状態で停電や火災などが起きてパニックが発生すると想定しつつも、数字上の死者や負傷者は「ゼロ」となっている。あまりに楽観的な見通しというわけだ。被害額も、巨大地震が発生すれば古いコンビナートが打撃を受けたり、都心部で液状化現象が起きたりすれば大幅に膨らむ。インフラが壊滅すれば天文学的な数字になる恐れがあるだろう。
房総沖のゆっくり滑りは1996年以降、今回が5回目だ。前回が2011年10月だったので27か月ぶりとなるが、実はこの期間は過去の発生間隔と比べて最も短い。いつ、どれほどの規模の地震が起きるかは分からないが、これを予兆ととらえるならば十分な備えをしておいて損はない。