上映中の映画「永遠の0」の勢いが止まらない。観客動員数は370万人を突破し、封切後4週連続でランキング首位と好調をキープしている。
この作品に対して「見たことを記憶から消したくなった」と痛烈批判したのが、映画監督の井筒和幸氏だ。何とも辛口のコメントに、原作者の百田尚樹氏もすぐさま反発してみせた。
「特攻隊を美化している」に「記憶ゼロにして何も喋るな」
「井筒節」がさく裂したのは、2014年1月16日深夜に放送されたラジオ番組でのこと。共にパーソナリティーを務めるマツコ・デラックスさんらとの映画談議の際に、「見たことを記憶から消したくなる映画」として名指ししたのが「永遠の0」だったのだ。
「特攻隊を美談にしている」と主張。加えて、岡田准一さんが演じる主人公は「生きたい」と考えていたのに特攻隊に志願して戦闘機に乗り込む筋書きを不自然と感じ、「そんなわけない」と語気を強めた。さらに「(実際に特攻隊に)行かない人は何人もいた。それでも『どうしても行かなきゃしょうがなかった』という空気があったという証言はよく語られる……そういう証言に基づく本当の話なら別やけど」と続けた。これに対して「永遠の0」はつくられたストーリーで「ありえない設定」、しかも特攻隊を美化していると監督の目には映ったようだ。
この発言を複数のインターネットニュースが報じると、原作者の百田氏は1月20日にツイッターで、記事を引用しながら「なら、そのまま記憶をゼロにして、何も喋るなよ」と井筒監督に反撃している。「戦争賛美」という批判は以前にも寄せられていて、2013年8月17日付のツイッターではこう断言していた。
「私は『永遠の0』で特攻を断固否定した。多くの特攻隊員に慕われていると言われている大西瀧治郎中将さえも批判した。それなのに一部の粘着する連中から『百田尚樹は特攻を賛美して肯定する軍国主義者とだ(注:原文ママ)』と執拗に非難される。多くは本を読んでない人だが中には読んだと言う者もいるから唖然とする」
また2013年12月20日付の日本経済新聞電子版のインタビュー記事では、「主人公にあえて『臆病者』『海軍の恥さらし』と言われる人物を選んだのは、小説で『生きる』ということを描きたかったからです」と説明していた。当時の航空兵は戦死率が高く、そこで「とにかく生きて帰る」というキャラクターを据えることで「生きる」ことを問えるのではと考えたそうだ。