米国のキャロライン・ケネディ駐日大使がツイッターでイルカの追い込み漁を批判したことに対して、ツイートが個人的な見方に過ぎない可能性を指摘する声が出ている。
過去の国務省の声明ではイルカ漁を批判する文言は見あたらない上、前任者の捕鯨に関するツイートとも大きく方向性が違っているからだ。
前任者は「皆さんがこの問題についてどう思っているか興味があります」
ツイートは2014年1月18日に掲載され、内容は
「米国政府はイルカの追い込み漁に反対します。イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念しています」
というもの。2つある文章の順番が前後しているものの、英語でも同様の内容がツイートされた。捕鯨の町として知られる和歌山県の太地町で1月17日に追い込み漁が行われ、白いバンドウイルカが捕獲されたことを念頭に置いているとみられる。駐日大使が捕鯨について賛否を表明することは異例で、日本語のツイートには批判の声が、英語のツイートには賛同の声がそれぞれ相次いだ。
実は、駐日大使の捕鯨をめぐる発言が話題になるのは、今回が初めてではない。11年10月には、ジョン・ルース大使(当時)が、
「アメリカのフォロワーが日本のイルカと鯨の捕獲への懸念をツイートしています。日本のフォロワーの皆さんがこの問題についてどう思っているか興味があります」
ツイートし、
「真意が分からない」
「食文化に口を出すな」
といった批判的な反応が相次いだ。ただ、このときは自らのスタンスは明らかにせずに、あくまでも日本国民の意見を募集するという体裁だった。今回のケネディ大使のツイートは、それよりも1歩踏み込んだ形だ。
「追い込み漁」の単語は国務省やホワイトハウスのウェブに見あたらず
また、ケネディ大使のツイートの「米国政府はイルカの追い込み漁に反対します」という部分は、実は個人的見解に過ぎないとの見方も出ている。米政府の文書で確認できないからだ。例えば、米政府が反対しているという「追い込み漁」(drive hunt fisheries)という単語は国務省やホワイトハウスのウェブサイトではヒットしない。捕鯨関係では、国務省の報道官が11年12月にオーストラリア、オランダ、ニュージーランド政府と連名で、南洋で危険な行為をやめるように求める声明を発表している。この声明では、「いわゆる『科学的な捕鯨』を含む商業捕鯨には引き続き断固として反対」しており、「最近、日本の捕鯨船が南洋に向けて出港したことには失望している」と捕鯨には否定的だが、やはりイルカの追い込み漁に関する言及はない。
菅官房長官「伝統的な漁業のひとつで、法令に基づき適切に実施」
日本政府としても、ケネディ氏のツイートには反論している。菅義偉官房長官は1月20日午後の会見で、
「イルカを含む鯨類は重要な資源であり、科学的根拠に基づき、持続的に利用すべきと考えている。また、イルカ漁業は我が国の伝統的な漁業のひとつで、法令に基づき適切に実施されていると考えている。また、イルカは国際捕鯨委員会(IWC)の管理対象外であり、各国が自国の責任で管理を実施することにしている」
と述べ、イルカの追い込み漁は問題ないとの立場だ。今後、米国側に対して日本の立場を説明するという。