「あなたの思いは決して忘れはしない」。1月12日、大槌町で開かれた成人式で、藤田晴香(はるか)さん(20)と飛田槙惟(ひだ・まい)さん(20)が、震災で行方不明になった友人の小松彬乃(あきの)さん(当時17)の写真を抱きながら参加した。新成人代表の小松隼人(はやと)さん(20)は、代表あいさつで、彬乃さんを悼んだ。
藤田さんと飛田さんは、彬乃さんと小学校からの幼なじみだった。彬乃さんは母親の志知子(しちこ)さん(当時50)とともに犠牲になり、藤田さんと飛田さんは、二人の遺影を抱きながら式典に参加した。二人は「明るい友だった。一緒に成人式に臨んでいる気持ちです。彼女の思いは決して忘れない」と話した。小松隼人さんは「今日、この成人式をともに迎えるはずだった友を思うと胸が詰まる。ともに笑いあえたはずなのに……」とあいさつした。
彬乃さんの父で町議の小松則明さん(53)は、式典後、「娘は仲良しの友達に恵まれた。きっと喜んでいることでしょう」と語った。
式典には141人の新成人が参加し、碇川(いかりがわ)豊町長が式辞で、「日ごろから多くの友人を持って知識と見聞を広げ、あせらずに一歩、一歩、着実に希望ある人生を歩んでほしい。復興に向けてみんなで頑張ろう」と述べ、新成人を激励した。式典後の記念アトラクションでは、大槌中学校や吉里吉里中学校時代のスライドがスクリーンに映し出され、3年生を担任した先生方が登壇して、当時の思い出を語った。続いて大槌高校吹奏楽部が演奏し、大槌湾に浮かぶ蓬莱島(ほうらいじま)がモデルとされるNHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」の主題歌で演奏を締めくくった。
●新成人代表の小松隼人さんのあいさつ要旨
「幼稚園で初めて友達ができたことや、小学校の学習参観日で読んだ作文、中学校のクラスで過ごした宝物のような時間、高校の部活動で泣き、笑った日々。今でも、この胸に鮮明に刻んでいる。しかし、そんな青春の途中で、悲劇が訪れた。未曾有の大災害といわれたあの忌まわしき東日本大震災。気づけば3年がたとうとしている。今日、この成人式をともに迎えるはずだった友を思うと胸が詰まり、ともに笑いあえたはずの未来を想像してやまない。おおつちさいがいエフエムに勤めていて、すぐそばで大槌町を見詰めているからこそ、日々、感じることがある。それは若者が足りないということです。遠方の地で学業にいそしんでいたり、職に汗を流しながら技術を磨いていたりと、皆、切磋琢磨(せっさたくま)している途中ではあるが、いつか、私たちが故郷を思い、復興の一端を担っていけたらと思う。この一瞬を無駄にせず、明日を生きる自分自身が後悔しないよう、時には泣いたって、迷ったって、絶望したっていい。未来があることだけは絶対忘れないよう、これからの日を輝かせていきたい」
(大槌町総合政策課・但木汎)
連載【岩手・大槌町から】
(28) << (29)