大学が出題ミスを認めて文部科学省に報告しても、ウェブサイトで受験生に公表されない「隠れ出題ミス」は、全国でかなりの数にのぼる。加えて、大学側がミスだと認めない問題の中にも、かなり「きわどい」ものがある。
大学側はミスを認めない根拠として、問題が教科書の記述に基づいていることを挙げるが、その教科書の記述の妥当性が揺らぎかねないケースもある。広義の「隠れ出題ミス」は、さらに多いと言えそうだ。
教科書の不正確な時系列がそのまま出題される
例えば立命館大学で2013年度に7学部の選択科目として行われた日本史の問題では、
「藤原氏を生母としない後三条天皇が即位すると、【D】は関白を弟に譲って、宇治に引退した」
と、空欄に最も適切な人物名を埋めさせる問題が出た。出版社や予備校が出す問題集では藤原頼通(よりみち)が正解だとされているが、参考書などで知られている時系列は以下のとおりだ。
・1067 年 12 月 5 日 藤原頼通が関白を辞する
・1068 年 4 月 16 日 藤原頼通が宇治殿に隠遁
・1068 年 4 月 17 日 藤原教通を関白とする
・1068 年 7 月 21 日 後三条天皇が即位
つまり、設問の文章は後三条天皇の即位と【D】が関白を辞する時系列が逆で、【D】に藤原頼通を入れると論理的に成り立たないことになる。だが、大学側は、全国の高校で広く使われている山川出版社の日本史Bの教科書に
「1068年(治暦4)年、藤原氏を生母としない後三条天皇が即位し、藤原頼通は関白を弟の教通に譲って、宇治に引退した」
と、設問とほとんど同じ記述があることを根拠に、出題ミスではないという立場だ。出題意図については、
「具体的な日付というよりも、流れとして教科書の記載を理解しているかを問う問題」
と釈明している。
同様の問題は、13年度の立教大学の日本史の問題でも起こっている。問題では、「正しくない」ものを選ばせる選択肢の中で、
「イギリスが強大な軍事力で南京条約を結び、上海など5港を開港させ、香港島を奪ったことを知った幕府は、この法令(編注:異国船打払令)を緩和した」
というものがあった。問題集では、この選択肢は「正しい」とされていたが、南京条約の内容が日本に伝わったのは1843年7月なのに対して、異国船打払令が緩和されたのは1年近く前の1842年8月だ。やはり、時系列が不正確な記述になっている。