北朝鮮の国防委員会副委員長だった張成沢(チャン・ソンテク)氏が2013年12月に突然処刑された理由に、新たな説が浮上している。宴会などで朝鮮労働党幹部を接待する「喜び組」と呼ばれる女性たちと張成沢氏が関係を持ったことに正恩氏が激怒した、というのだ。
確かに、張氏の女性関係を指摘する声は他にもあり、女性問題が失脚の一因になった可能性もありそうだ。
正恩氏の幼少期知る藤本氏が語る
新説を唱えているのは、2001年まで故・金正日総書記の専属料理人として北朝鮮に滞在した藤本健二氏だ。藤本氏は幼少期の正恩氏のことも知っており、12年夏には訪朝して11年ぶりに正恩氏との再会を果たしている。
藤本氏は14年1月9日に米政府系ラジオ局「自由アジア放送」(RFA)が行ったインタビューの中で、処刑は「喜び組を選抜する過程で張成沢が犯した女性遍歴」が原因だったとの見方を示した。単なる失脚にとどまらず処刑にまで至った理由については、
「北朝鮮から彼の痕跡を完全になくすためで、それだけ張成沢氏に対する正恩氏の怒りが大きかったという証拠」
と語った。張氏の失脚を伝える13年12月9日の朝鮮労働党の機関紙、労働新聞では、張氏の罪状について
「権力を乱用して不正腐敗行為をこととし、多くの女性と不当な関係を持ち、高級食堂の裏部屋で飲食三昧におぼれた」
とある。正恩氏が張氏の道楽ぶりに怒っていたことは間違いないようだ。
崔竜海(チェ・リョンヘ)軍総政治局長との確執が背景にあるとの説については、藤本氏は
「崔竜海氏と張成沢氏が争うことは、まずない」
と否定した。
「1980年代に、崔竜海氏がボーリング場建設に関連して朝鮮総連から10万~15万ドルの賄賂を受けてピンチに陥っていたときに助けてくれたのが張成沢氏」
だからだという。