カジュアルウェアの「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、H&MやGAPといった競合するグローバルブランドから引き抜いてきた人材を、相次いでグループ執行役員に抜擢した。経営体制の強化と事業拡大を目指すという。
世界のアパレル業界の第一線で活躍する人材をマネジメントチームに登用することで、北米をはじめとするグローバル市場で攻勢をかけ、成果を上げていく。
北米市場でGAPやFOREVER21に対抗? ショッピングモールに出店攻勢
4人の経歴は錚々たるもので、そろって「凄腕」のエキスパートとされる。
ユニクロのデザインを統括するチーフ・クリエイティブ・オフィサー(グローバル デザイン担当)に就いたリアン・ニールズ氏は、Calvin KleinやBanana Republic、 Theory、GAPでデザインの経験を積んだ後、American Eagle Outfittersでチーフ・デザイン・オフィサーなどを務めた。
ユニクロのEコマース・グローバル・CEO、ジョン・フレミング氏はWal‐Mart Stores, Inc.のエクゼクティブ・バイス・プレジデント兼チーフ・マーチャンダイジング・オフィサーで商品、サービス、Eコマース事業を統括。米国ユニクロのチーフ・マーチャンダイジング・オフィサーに就いたスティーブン・セア氏は、Banana Republicのマーチャンダイジングや事業開発などで20年以上も米国のアパレル業界に携わってきた。
ロンドンと東京を拠点に、ユニクロのマーケティング事業を統括する、チーフ・マーケティング・グローバル・オフィサーのヨルゲン・アンダーソン氏はH&Mスイスの最高経営責任者(CEO)で、H&Mブランドのチーフ・マーケティング・オフィサーなどを歴任した人だ。
こうしてみると、なにやらGAPやFOREVER21への対抗意識がうかがえるようにも思えるが、ファーストリテイリングは、「そういった意識はありません」という。
とはいえ、2013年12月には米国事業の新しいCEOに、米FOREVER21で10年以上エグゼクティブ・バイス・プレジデントなどを務めていたラリー・マイアー氏を昇格させたことも、北米対策とみる向きがある。
米国ユニクロは現在17か店を出店。最近はショッピングモールなどへ出店攻勢をかけており、2013年9月末時点の7か店からわずか4か月で10か店も出店できたのは、「マイヤー氏の手腕」ともいわれる。
さらに、2014年前半はペンシルベニア州やコネチカット州などに5か店の出店を予定。14年後半には「未出店」エリアのボストンやロサンゼルスへの進出を計画している。
ファーストリテイリングは、「年間20か店前後の出店ペースを維持できれば、当初目標としていた『2020年、100か店』も可能」とみている。
役員、幹部らの「引き抜き」に前向き
ファーストリテイリングが2014年1月9日に発表した第1四半期(13年9~11月期)の連結決算は、純利益が前年同期比9%増の418億円となり、第1四半期としては過去最高となった。売上高は22%増の3890億円、営業利益は13%増の640億円。中国や韓国、米国への積極的な出店が寄与し、海外のユニクロ事業の売上高は1140億円と76.8%増と大きく伸びた。
米国では既存のニューヨーク3か店が2ケタの増収と好調だったことに加えて、13年秋にオープンした10か店も順調に推移し、計画を上回る増収増益を達成したという。
半面、国内市場は例年より気温の高い日が多かった10月の冬物衣料が伸び悩み、第1四半期のユニクロの売上高(既存店ベース)は前年同期に比べて0.3%減った。
少子高齢化で売り上げが伸びにくくなっている国内市場に比べて、北米や東南アジア、中国などの市場は有望だ。
同社は「グローバル市場を拡大していくうえで人材面は重要な課題です。マネジメントチームもアパレル業界などの第一線で活躍してきたエキスパートの力が必要で、優秀な人材の確保には注力しています」と話しており、「引き抜き」の手を緩めるようすはない。