アマゾンによる電子書籍の自費出版サービス「Kindleダイレクト・パブリッシング(KDP)」の日本展開がスタートして以来、自身のコンテンツを簡単に発表できるようになった。
だが、こうした手軽さの一方で、何者かが著者に無断で電子書籍を販売してしまう問題が発生しているようだ。同人誌でも被害が出ている。2014年1月15日には、グラフィッカーの鶴崎貴大さんがツイッターで被害を報告した。
出版社欄には同人誌専門アップロードサイト
鶴崎さんは15日、「自分の同人誌が勝手にamazonのkindleで売られてるんだけどこれどうしたら良いの…」とツイートした。作品は、人気ブラウザゲーム「艦隊これくしょん ~艦これ~」を元にした二次創作のアダルト指定同人誌で、商品ページをみてみると、著者名には鶴崎さんの名前があった。発売日は1月13日となっている。
出版社欄には同人誌専門のアップロードサイトの名前があり、Kindleストア内ではこの作品以外にもいくつかの電子書籍を販売しているようだ。アップロードサイトにアクセスし、問題になっている同人誌を検索してみると、同じ作品のデータが見つかった。実際に電子書籍を販売しているのが誰なのかは不明だが、著者ではない何者かがデータを用い、KDPを通じて Kindle本を制作したと考えられる。
販売数に制限のない電子書籍は、一度公開してしまえば半永久的に販売することができる。被害を訴えた著者は「勝手にアップロードまではちょくちょく見たんですけど、kindleで勝手に販売とか想像の埒外だったのでまじめに驚きました」と困惑気味で、販売停止のための手続きをしつつ、今後の対策を考えるとしていた。
「この手の話はもっとありそうだなあ」
一連のツイートはネット上で注目を集め、「徹底的に叩き斬らないとどうしょうもないですね」「Amazonに何らかのデメリットが発生するようにしないと絶対無くなりそうにないな」「とりあえず裁判と、口座のブラックリスト入りってところでどうでしょう?」などと、さまざまな意見があがっている。「本人気づいてないだけでこの手の話はもっとありそうだなあ」と懸念する声もあり、実際に自身の作品を調べてみたところ、無断販売が発覚したとツイートする同人誌作家もいた。
KDPの出版費は無料、「出版手続きにかかる時間は5分、本は48時間以内に販売されます」とうたっているとおり、「手軽さ」を売りの一つにしている。基本的な個人情報と銀行口座を入力すれば、誰でも登録できる。出版前には48時間以内で終わるという内容の適正審査があるそうだが、海外ではすでに今回と同様の事例が横行しているとの指摘があり、現状の仕組みでは第三者による無断販売をすべて未然に防ぐのは難しそうだ。
実際にこのような問題が起きた場合の対応について、アマゾン ジャパンに問い合わせたところ「個別具体的な事例についての回答は控えさせていただきます」として回答を得ることができなかった。だが、原則としてはAmazon.co.jpのサイト上にある「知的財産権侵害の申し立て」から申告することができる。自身が権利者である場合、オンラインまたは書面での申告が可能とのことだ。なお、鶴崎さんは16日深夜に削除されていることを確認したとツイッターで報告している。