デビュー2戦目で初ゴール――。サッカー日本代表の本田圭佑選手が、イタリア1部リーグ(セリエA)・ACミランに移籍後、初先発の試合で早速結果を出した。
格下相手のカップ戦とはいえ、ミランのサッカーに素早く順応して得点を挙げたのは大きい。不振にあえぐチームが必要としていた役割を果たしていけば、その地位を不動のものにできるはずだ。
前線でアクセントをつけられる選手
味方選手のシュートを相手ゴールキーパーがはじいた。すかさず反応した本田選手が駆け寄り、左足で蹴り込むとボールがそのままゴールに吸い込まれた。2014年1月15日(日本時間16日)に行われたイタリア杯5回戦、相手はスペツィア。ミランの本拠地サンシーロに集まったファンへ挨拶代わりの一撃だ。
前半初めはチームメートといまひとつかみ合わず、18分にはイエローカードをもらってしまう。だが徐々に調子を取り戻し、フリーキックでは前線に合わせて決定的場面を演出するなど「らしさ」を発揮していった。後半19分に退いたが、初戦を上回る活躍だったのは明らかだ。
指揮官のタソッティ監督代表は「あのゴールは美しかった」と評価し、チームメートのFWパッツィーニ選手も、本田選手の適応の早さに「賛辞の言葉しか出てこない」と称えた。「フットボールレフェリージャーナル」を運営するサッカージャーナリストの石井紘人氏も、「試合中、機能していた」と述べた。あえて言えば、主力のカカ選手やバロテッリ選手が欠場してベストメンバーではなく、カップ戦で相手がセリエBの格下だったため、「次戦のリーグ戦を見てみたい」と続けた。
とはいえ、移籍後2試合で本田選手は早くも「居場所」を確保しつつある。一流選手をそろえながらもリーグ戦で苦戦続きのミランは、「どこかずれていた」(石井氏)。例えばボールの支配率は高いのに、最後が決めきれない。チームが求めていたのは、前線にアクセントをつけられる選手だったと話す。相手陣内ペナルティーエリア付近の「アタッキングサード」と呼ばれる場所で味方からボールを預かり、スピードのある選手に渡して得点に結びつける戦力。「かつてイブラヒモビッチ選手(現・パリSG)が担っていたこのような役割を本田選手が演じることで、パスがスムーズに回るようになっています」。
ミドルやフリーキック武器に「短時間でもリズム変えられる」
石井氏がもうひとつ注目した点がある。ミランには「守備陣が我慢できなくなって失点し、それにより攻撃のリズムも悪くなる」という悪循環があった。「その単調な展開を、前節は本田選手のダイレクトプレーが変えました」と説明した。流れを呼び寄せる存在となれば、チームの士気も上がる。
タレント集団のミランにあっては、厳しいポジション争いが避けられない。本田選手の場合、起用の上でカカ選手とロビーニョ選手の「ブラジルコンビ」との兼ね合いが出てくるという。常時先発とはいかないかもしれない。ただ、低迷するチームの起爆剤として獲得した経緯もあり、試合途中での投入という形を含めて当面は出場機会を与えられるだろうと石井氏はみる。途中出場となればプレー時間が短く、流れの中で味方との連携を組み立てなければならない。それでも「ミドルシュートやフリーキックという武器がある。状況が悪い場面でも一気にリズムを変える力を持っているだけに、限られた時間内でも好結果を生みやすいと思います」。
「ミランの救世主だ」と持ち上げる日本のメディアと比べて、現地メディアやファンは当初「本田選手はどれぐらい活躍してくれるだろうか」と少々様子見だったようだ。だが実戦でのプレーを見て期待度は増しているという。新監督に「親日家」と言われるセードルフ氏の就任が確実となったのも追い風かもしれない。入団会見で希望した「トップ下」で躍動する姿が期待できそうだ。