アニメ演出家のヤマカンこと山本寛監督(39)が大ピンチだ。ヤマカンは自身のツイッターで、少しだけでも一日だけでもいいからTVアニメの制作を手伝ってください「助けてください」とアニメーターに呼びかけている。
制作が間に合わなくなった原因は、現在ロードショー公開されているアイドルグループを題材にしたアニメ映画「Wake Up,Girls! 七人のアイドル」とテレビ版「Wake Up,Girls!」の制作を同時進行させ、同じ2014年1月10日に公開するというスケジュールを組んだため。映画は無事に公開できたがスタッフが疲労困憊し、テレビシリーズの制作に支障が出てしまった。
「私が至らなかったためであり、すべて私の責任です」
「Wake Up,Girls! 七人のアイドル」と「Wake Up,Girls!」が公開されてから2日目の1月12日、東京の映画館「角川シネマ新宿」で舞台挨拶をしたヤマカンは、ほぼ300席が埋まった館内に向かって、ネット上に書き込まれている批判は知っているし、自分もその通りだと思う、とし、
「私が至らなかったためであり、すべて私の責任です」
と強い口調で謝罪した。
10日に始まったテレビアニメについて、作画が酷い、絵が動いていない、キャラの顔の見分けがつかない、そもそもどんな物語なのか意味不明、などといった激しい批判がネット上に出ていて、ヤマカンはそれを認めた。テレビアニメは劇場版の続きとして制作されているため、ストーリーでいえばテレビ版は4話目くらいに当たり、主人公のアイドルグループがデビューコンサートを終えた後の物語になっている。
視聴者が一番問題にしているのは作画の悪さで、急に絵柄が何十年も前の古臭いテレビアニメのようになったり、背景が書き込まれていないシーンも出てきたりする。ヤマカンは壇上で、映画とテレビ版制作の同時進行は可能と考えていたがそれは誤算だった。納期に間に合わせなければならず、「ああいうことになってしまった」と話した。ただし、製作や宣伝などのスタッフが「Wake Up,Girls!」にかけている情熱や意欲はハンパなものではないため、ぜひその熱を受け取ってもらいたい、とした。壇上にはアイドルグループを演じる声優も登場していて、テレビ版の不評を知っているからか、
「1話(を見ただけ)で切らないでー!!」
といった悲痛な発言まで出ることになった。
劇場版はクオリティー高いと評価する声が意外に多い
ヤマカンは壇上で、今後の制作に関し「必ずなんとかします」と約束していたが、14年1月15日に自身のツイッターでこんなことをつぶやくことになってしまった。
「あんまりやりたくなかったけど、急告。『Wake Up, Girls!』に興味のあるアニメーターさん、助けてください。今スタジオのスタッフは疲労困憊です。それでもこの作品への愛だけで踏ん張っています。少しでもいい、加勢してください。一日だけでいいのでタツノコプロに入ってください」
この呼びかけに対し「是非参加させてください」「私が手伝いましょう」など複数のリプライが付いている。
ヤマカンが作るアイドルアニメにはかなりの期待がかけられていた。というのもヤマカンを一躍有名にしたのは06年に放送された大ヒットアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」のエンディング。そこで、5人のキャラに歌って踊らせた「ハレハレダンス」が世界中から注目され「ユーチューブ」にはおびただしい数の動画がアップされたからだ。
その後、「らき☆すた」「かんなぎ」といった作品の監督をするが、やはりここでも歌やダンスに注目が集まり、「かんなぎ」に至ってはオープニングで主人公が本編とは全く関係のないトップアイドルとなり、大きなステージで歌い踊るというシーンを作成、そのクオリティーの高さが大絶賛されていた。
実は、テレビの「Wake Up,Girls!」は批判されているものの、劇場版はそれなりのクオリティーがあるため鑑賞した人の中には絶賛する声や、テレビ版には失望したけれども映画を見てからもう一度テレビ版が見たくなった、今後のテレビ版に期待したくなった、との声が増えているのも事実だ。
ネットではヤマカンの今回のツイッターを見て、これからの「Wake Up,Girls!」から目が離せなくなったと喜ぶファンもいる。また、制作にかける時間を増やすことも含め、ストーリーを視聴者に理解してもらうことが重要だとし、
「劇場版を3回くらいに分けて早急にテレビ枠で流したほうがいいのではないか」
などと主張している人もいる。