南スーダンに展開するPKO(国連平和維持活動)で、日本と韓国の話が噛み合わない状態が続いている。日本が韓国に無償で提供した弾薬1万発について、韓国側は「すでに返却した」としているが、それから4日経っても「自衛隊の宿営地には届いていない」という。
また、現地の自衛隊幹部は、韓国軍の指揮官について「プライドを捨てて頼んできた」と決断をたたえたが、韓国メディアは「刺激的な発言で反日感情に油を注いだ」と反発。韓国政府は「いちいち対応しない」と、相変わらずそっけない態度を続けている。
治安悪化で輸送ヘリが足止めされていた
弾薬は2013年12月23日に提供され、韓国政府は12月30日にも国連経由で返却する意向だった。現地の治安悪化で韓国政府の支援物資を宿営地に運ぶための国連ヘリが首都・ジュバの空港で足止めされ、返却できない状態が続いていた。
ただ、聯合ニュースが14年1月10日に韓国軍の合同参謀本部の話として伝えたところによると、同日、弾薬1万発を国連を通じて自衛隊に返却したという。足止めされていたヘリが飛ばせるようになり、ジュバから弾薬や武器を韓国軍の宿営地に届けることができたためだ。
ただ、日本側の言い分は食い違っている。小野寺五典防衛相は1月14日朝の会見で、
「現場の部隊間で連絡は取り合っているという報告は受けている」
としながらも、
「まだ日本側に返却をされたという事実はないと承知をしている」
「少なくても、自衛隊の宿営地には届いていない」
と話し、日本側に弾薬は返却されていないことを明かした。国連のヘリが到着するのも、自衛隊が宿営地を設けているのも、同じ首都ジュバだ。仮に韓国軍が国連に弾薬を引き渡していたとすれば、国連が3~4日もジュバで弾薬を保管するという不自然な状態になっている上、韓国側は「国連を通じて日本側に返却した」と、10日時点で日本側に物資が渡っているかのような不正確な情報を流したことになる。
「韓国隊が危機にひんしているのを見過ごすわけにはいかないと感じた」
さらに、毎日新聞が1月13日に掲載した南スーダン派遣施設隊長の井川賢一1等陸佐(45)のインタビューが、両国のすれちがいを際立たせている。インタビューは1月11日にジュバの自衛隊宿営地で行われ、井川氏は弾薬を提供した時の思いを
「韓国隊が危機にひんしているのを見過ごすわけにはいかないと感じた。何かあった場合、将来に禍根を残すと考えた」
と振り返った。韓国側の指揮官についても、
「人命救助のためプライドを捨てて頼んできた。すばらしい指揮官だ」
と称賛した。
当初は韓国側は「国連に弾薬の支援を要請し、国連を通じて支援を受けた」と説明していたが、後に日本に直接要請したことを認め、軌道修正している。この点については、井川氏は「いろいろ思うところはあった」と述べるにとどめた。
国防部報道官「部隊長個人の考えにいちいち対応する理由はない」
この記事に韓国メディアは素早く反応。通信社の「ニューシース」は
「(日本ではなく)国連に弾薬支援を要請したという韓国政府の説明とは辻褄が合わない上、『プライドを捨てた』と皮肉るような刺激的な発言をして、国民の反日感情に油を注ぐような状況が演出された」
と、韓国側にとって不利な論点が蒸し返されたことを憤った。
また、国防部のキム・ミンソク報道官は1月14日の会見で、
「現地自衛隊の部隊長が私たちの部隊に関して話したことは個人の考えで、われわれがそれに対していちいち対応する理由はないと思う」
と発言を黙殺する構えだ。