本塁打王バレンティン「DV容疑」で逮捕 「夫婦ゲンカ」では済まない米国の法律

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   プロ野球の本塁打記録を塗り替えた東京ヤクルトスワローズ、ウラディミール・バレンティン選手が米国で逮捕された。妻に対するドメスティック・バイオレンス(DV)の疑いだが、本人は否定している。

   米国では、夫の妻に対するDVは連邦法、さらに州法の定めで厳しく罰せられる。球史に名を残した男が一転、窮地に立たされた。

「押す、つかむ」行為は身体的虐待に含まれる

故郷の英字紙が、バレンティン選手保釈を伝えた
故郷の英字紙が、バレンティン選手保釈を伝えた

   バレンティン選手が逮捕されたのは、妻に対する監禁、暴行容疑だ。現地警察によると妻とは別居中で、米フロリダ州にある自宅をたずねたところ入室を断られたため窓から侵入、嫌がる妻の腕をつかんで2階の寝室に入れ、施錠して出られないようにしたという。

   ただバレンティン選手の弁護士は、本人が容疑を否認していると明かした。当初2人は家の外で話していたが、人目を気にして家の中に入ろうと妻の腕を引っ張ったのを誤解されたとの言い分で、食い違いがみられる。出身地のオランダ領キュラソー島の英字紙「キュラソー・クロニクル」電子版は2014年1月14日、6500ドル(約67万円)を支払って保釈されたと報じた。

   DVについて米国では、各州で法律が定められているほか、1994年には連邦政府が「女性に対する暴力防止法」を制定した。在ボストン日本国総領事館は、連邦法と米北東部ニューイングランド地方6州のDVに関する法制度の解説をウェブサイト上で公開している。その中に、米司法省「女性に対する暴力防止法オフィス」によるDVの定義の説明がある。DVと扱われる身体的虐待には、殴るだけではなく「押す、つかむ」といった行為も含まれ、また相手を委縮、孤立させた場合は「心理的虐待」とみなされる。仮にバレンティン選手が、実際にいやがる妻の腕をつかんで寝室に閉じ込めたとしたら、DVと認定されても仕方がないだろう。

   州によっては、個々の行為の規定に微妙な違いがある。コネチカット州はDVを「家庭内暴力」と位置付け、肉体的な暴力やストーカー行為は明らかに「アウト」だ。一方、口頭による威嚇は「実際に身体的暴力を伴うか、暴力につながり得る」場合に限りDVとする。これに対してマサチューセッツ州やメイン州は「虐待」と定義して、「脅迫、ハラスメント、いじめなどにより身体的傷害の恐れを持たせる行為」「被害者に身の危険を感じさせ怖がらせること」は広くDVとしている。

実弾所持で逮捕は出場停止処分、大麻所持は解雇

   全米50州のなかでも、バレンティン選手が逮捕されたフロリダ州の法律は厳格なようだ。スポーツニッポン電子版は2014年1月15日付の記事で、駿河台大学法科大学院教授の島伸一弁護士のコメントを紹介。同州では、被害者に訴える気がなくても、証拠さえあれば検察側が手続きを進められると説明した。さらに、最も軽い「言葉による暴力」でも5日間収監され、暴力をふるった場合は最長15年の懲役もあり得るという。ただ程度が軽いと、保護観察処分などで済むことも少なくないようだ。

   法的な処罰に加えて、来季日本でプレーできるかも気になる。現役の外国人選手の逮捕は珍しいが、過去にもあった。例えば2010年、中日ドラゴンズに所属していたマキシモ・ネルソン投手が銃刀法違反の疑いで逮捕された。空港でカバンの中から銃弾が見つかったためだが、意図的ではないとして不起訴処分となった。結局3か月の出場停止処分となり、解雇は免れた。また1988年、当時の近鉄バファローズでプレーしていたリチャード・デービス選手は大麻所持で逮捕となった。こちらは球団側が解雇、さらには日本球界からの永久追放と厳しい処置が下された。

   バレンティン選手と似たケースでは、今シーズン東北楽天ゴールデンイーグルスで活躍したアンドリュー・ジョーンズ選手が挙げられる。来日前に妻への暴行容疑で逮捕されたのだ。夫婦ゲンカがエスカレートした末の騒動で、激しい口論はあったものの暴力行為は認められなかったようだ。楽天側は事態を把握したうえで、ジョーンズ選手の入団にゴーサインを出した。

   1月15日付のデイリースポーツ電子版で、日本大学名誉教授の板倉宏弁護士は、「DVはいけないこと」を前置きしつつ、今回の逮捕でバレンティン選手の今後に影響はないとの見方を示した。重罪ではなく不起訴の見通しとの考えだ。事態は流動的だが、現時点でヤクルト側は来季のプレーを前提に、「円満解決」を目指しているとみられる。

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