金融庁は、暴力団員らへの融資問題に関連し、みずほ銀行に業務の一部停止を命じる行政処分を、2013年12月26日に出した。みずほ銀行を傘下に置くみずほフィナンシャルグループ(FG)も金融庁から業務改善命令を受けた。
みずほFGは再発防止に向け、企業統治の透明性を高めるため社外取締役を中心に人事や役員報酬を決める「委員会設置会社」に移行すると発表した。しかし、これで本当に、経営統合前の旧3行が主導権を争う意識が抜けず、足を引っ張り合ってきたみずほの問題体質が変わるのか。。
佐藤社長による「ワントップ」体制がより強固に
みずほ銀行は2013年9月に「暴力団員への融資を2年以上も放置していた」として、既に金融庁から業務改善命令を受けていた。その後、「問題融資の把握は担当役員止まり」としていた金融庁への説明が誤りで、実際は歴代3頭取にも取締役会資料などで報告されていたことが明らかになり、暮れも押し迫った12月末に追加処分を受けた。
みずほ銀行に対しする処分には、問題融資の舞台となったグループの信販会社「オリエントコーポレーション」などを通じた「提携ローン」を2014年1月20日から1か月間停止する命令も含まれる。親会社のみずほFGに対しては社内管理体制を改善すべきだとして、この問題で初めて業務改善命令が出された。
みずほFGの塚本隆史会長(前みずほ銀行頭取)は2013年11月にみずほ銀行会長を辞任したのに続き、2014年3月末でFG会長職も引責辞任することになった。佐藤康博みずほFG社長(みずほ銀行頭取)は前回の社内処分「半年間無報酬」から「1年間無報酬」に期間を延ばしたが、前回同様に肩書きに変更はなかった。一連の処分を通じ、佐藤社長による「ワントップ」体制がより強固になったとも言える。
委員会のメンバーの過半数を社外取締役に
それでは、みずほが今年6月の株主総会で移行を決める「委員会設置会社」とは何か。会社経営の監督と業務の執行を明確に分けるのが、その特徴だ。
従来の日本企業の「取締役」が行ってきた会社の具体的な運営(業務の執行)を「執行役」の役目とし、取締役会の権限は基本的な経営事項の決定と執行役の監督とする。さらに、取締役会の下に役員人事を決める「指名委員会」、役員の報酬を決める「報酬委員会」、業務が適切かをチェックする「監査委員会」を設け、各委員会のメンバーの過半数を社外取締役とする。みずほの場合、取締役会議長も社外とする。そのことで「外部の監視」を強め、経営の透明性を向上させようというわけだ。2013年10月末現在で上場企業のうち、ソニーなど57社が導入している。
佐藤みずほFG社長は2013年末の記者会見で委員会設置会社の導入について「(富士、第一勧業、日本興業の)旧3行のしがらみへの懸念を踏まえ、人事の問題を払拭する」と強調した。しかし一方で佐藤氏は旧3行の経営統合から10年以上経っても「一つの企業文化にしていくことは一朝一夕にできない」とも語り、問題の根深さをうかがわせる。
そこで委員会設置会社とは別に、OB人事の管理に一歩踏み込む。出世レースから外れた行員の再就職先を旧3行が分け合う慣例に、外部監視のメスを入れようとするもので、具体的には「指名委員会の下にOB人事の管理を担う組織を作る。プロセスと意思決定を第三者の目で見てもらい、どういう人がどういう組織に行くのかという意味での透明性を徹底的に高める」(佐藤社長)という。ただし、どこまで「外部性」を保てるかは、実際に組織ができ、動き始めてみないとわからないようだ。