薄型テレビ市場が復調の兆しをみせている。なかでも最近は大型で高画質の「4Kテレビ」が売れてきた。2014年は、ソチ冬季五輪やサッカーW杯ブラジル大会というビッグイベントが控えている。
家電量販店などを通じて市場調査を行っているジーエフケーマーケティングサービスジャパン(GfKジャパン)のアナリスト、山形雄策氏に最近好調な「4Kテレビ」への期待度を聞いた。
「大画面で高精細の映像を楽しめる」
―― 2013年の薄型テレビ市場を振り返ってください。
山形 2013年11月の薄型テレビ販売は、数量ベースでは前年に比べて12%減とマイナス成長が続いていますが、金額ベースでは8%増とプラスに転じました。その要因は、50インチ以上の大画面テレビや4Kテレビの販売が拡大したことで、薄型テレビの平均価格が上昇したためです。金額ベースで、前年比がプラスになったのはアナログ放送が停波した2011年7月以来、28か月ぶりのことになります。
12月の集計はこれからですが、薄型テレビの販売台数を2013年通年でみると、アナログ停波による反動減が大きかった2012年よりは戻ってきましたが、それでも200万台減の620万台にとどまります。しかし、これを「底」に、回復に転じるとみています。
―― エコポイント制度の終了やアナログ停波による買い替えの反動減は、家電メーカーの屋台骨を揺るがす事態になりました。
山形 現在、国内には約1億台のテレビがあります。本来、薄型テレビの寿命は約7年といわれます。「壊れてきたら買い替える」というのが通常の消費行動ですが、それがアナログ停波によって「テレビが見られなくなる」といった、半ば切羽詰った感じで、非常に多くの人が買い替えたのですから、その反動はかつてないほど大きくなるのも当然です。
ただ、直近は50インチや55インチといった大画面テレビが売れています。「4K テレビ」も、その一つ。高価ですが大画面で高精細の映像を楽しめると好評で、平均単価の押し上げに寄与しています。
―― 4Kテレビはなぜ売れているのでしょう。
山形 やはり大画面、高画質であることです。たとえば、最近の一眼レフカメラで写した写真は約2000万画素あります。これをテレビに映したとき、200万画素のフルハイビジョンテレビに対して、4Kテレビなら800万画素ですから、現在の薄型テレビの4倍きれいに見ることができるわけです。
4Kテレビは放送コンテンツを楽しむだけでなく、細部もきれいに見えて、迫力のあるスライドショーなどを楽しむのにもいいわけです。
家電量販店では、家電メーカーがサンプルを用意して、実際に画質のよさを体験してもらうなどして販売にあたっているケースが多くみられます。
―― 4Kテレビが売れるきっかけには、何があったのでしょうか――。
山形 製品の品揃えが充実し、価格も下がってきたことがあげられます。2013年はソニー、東芝が6月に、1インチ1万円を切るような製品を打ち出し、シャープも4K 対応の新商品を投入するなど、夏の商戦をにぎわしました。パナソニックも秋に4Kテレビを発売し、大手家電メーカーが出そろいましたから、消費者も選択の幅が広がりました。
また家電量販店は売り場面積を広げています。こうした動きが着実にムードを盛り上げていきます。加えて、景気回復もこうした製品の購入を後押ししているといえるでしょう。
4Kテレビ、「売れる」といっても数十万台レベル
―― どんな人が買っているのですか。
山形 4Kテレビは、まだ50インチ以上の大画面テレビにしか品揃えがありません。金額も高価ですから、主には新しいもの好きや画質にこだわる人などが購入していると考えられます。
年末商戦への期待もあって、13年通年の4Kテレビの販売台数は3万台を見込んでいます。2014年も引き続き好調には推移すると見込まれますが、数量としては数十万台レベルかと思います。
―― 4Kテレビに期待していいですか。
山形 総務省は2020年までに「4Kテレビ」や、その先の「8Kテレビ」(画像の解像度がフルハイビジョンテレビの16倍)を楽しめる視聴環境を整備するロードマップを策定しています。それによると、関心を持つ消費者が、14年には4K、16年には8Kを体験できる環境を整備するとしています。また2020年には希望する視聴者が、テレビによって4K、8Kの放送を視聴可能な環境を整備するとしています。
どんなに4Kテレビや8Kテレビが高画質でも、肝心のコンテンツが用意できなければ意味がありませんから。
一方で、4Kテレビの楽しみ方にはインターネットと接続して、インターネット動画を視聴することもあります。たとえば、動画サイトのYouTubeではすでに4K画質の映像を視聴することができますし、4K対応のコンテンツの数は増えています。
家電量販店の店頭で4Kテレビを見せてもらうと、画質のよさはすぐにわかりますし、インターネット以外でもスライドショーなどの楽しみ方ができます。4Kテレビの存在感は増しています。
山形雄策氏プロフィール
やまがた・ゆうさく 2006年ジーエフケーマーケティングサービス(GfK)ジャパン入社。アナリスト。テレビをはじめとした映像・音響製品などの市場分析に従事。