独フォルクス・ワーゲン(VW)がアジアを快走している。
日本では2013年の新車販売台数が19.7%増の6万7282台となり、過去最高を記録。年間新車販売台数が2000万台を初めて突破した中国でも、米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜いて、海外勢で首位に立った。
低燃費と安全性能で高い評価
日本自動車輸入組合(JAIA)によると、2013年(1~12月)の輸入車販売台数(日本メーカーを除く、速報値)は、12年に比べて16.1%増の28万540台と、大きく伸びた。4年連続で前年実績を上回り、1997年以来16年ぶりの高水準。登録車の新車販売に占める割合は過去最高の8.6%(12年は7.1%)だった。
「日本市場のニーズにあわせた、燃費性能の高い車種を拡充した」(JAIA)ことが好調の要因だが、景気回復に加えて、安倍政権の経済政策「アベノミクス」による株価上昇の恩恵で、「資産家層による高級車へのニーズも取り込んだ」(証券アナリスト)こともある。
そうした中で、メーカー別ではVWが12年に比べて19.7%増の6万7282台と、過去最高の販売台数を記録。輸入ブランド別のシェアでも、19.4%を占めて首位に立った。
12年10月発売の小型車「up!」に続き、13年6月には小型車「新型Golf」(ゴルフ7)を投入。低燃費で、輸入車としては値ごろ感のある新車が堅調。若年層などにも人気だった。
ゴルフは、13年の車名別新車販売台数で、2万3858台で首位。モジュール(複合部品)化を進めた開発手法や環境・安全性能の高さが評価され、輸入車で初めて「日本カー・オブ・ザ・イヤー2013~2014」を受賞した。
その勢いに乗って、2014年1月6日には小型ワゴン「ゴルフ ヴァリアント」を発売。時速30キロメートル未満で作動する「衝突回避ブレーキ」を搭載して安全性能を高めたほか、高効率なエンジンを採用することで燃費性能も最大2割引き上げた。
国内の新車販売は4月の消費増税後の販売減が懸念されているが、VWグループジャパンの庄司茂社長は「ヴァリアントで攻勢をかける」と、意気込んでいる。
中国、廉価の小型車の投入が奏功
一方、中国汽車工業協会(CAAM)が2014年1月9日に発表した13年12月の新車販売実績によると、VWの新車販売台数は23万5700台となり、13年通年で319万台あまりに達した。米GMの中国での新車販売台数は、13年通年で316万台(前年比11%増)。VWがわずかにGMを抑え、9年ぶりに首位に立った。
VWは、7万元弱(120万円程度)の廉価な中・小型車の投入に加えて、中国人好みの、SUV(多目的スポーツ車)などの車種で品揃えを充実したことで躍進。「日中問題で日本車が失速するなかでシェアを拡大したことも影響した」(シンクタンクの研究員)
欧州車を中心に輸入車人気が高まる韓国では、VWのSUV「ティグアン2.0TDIブルーモーション」や「パサート2.0TDI」が売れ筋。韓国輸入自動車協会(KAIDA)の2013年11月の輸入車販売台数(新規登録台数)によると、VWが2位の独BMWを逆転して首位に立った。
VWは小型車の「ポロ」なども人気が高く、他の輸入車に比べて相対的に価格が低いことが販売台数を伸ばしている要因とみられる。