大阪府が、ひったくりや路上強盗といった街頭犯罪の年間認知件数で2013年の全国ワースト1位となった。2012年には、殺人をはじめとする重要犯罪の認知件数も47都道府県で最も多かった。
府では街頭犯罪抑止に向けて各種取り組みを進め、1年前と比べて全体の件数は減っている。だが「犯罪多発都市」のレッテルははがせないままだ。
監視カメラ増、防犯活動支援で件数は減ったが…
大阪府警が2014年1月9日までにまとめたところによると、街頭犯罪(7手口)のうちひったくり、路上強盗、車上狙いなど5手口で大阪府が全国で最悪となった。件数自体は減少したが、減り幅が他の都道府県より小さかったことが全体で4年ぶりのワーストワンとなった理由だ。一方で自転車盗は、1年前から大幅に増えたという。
要因の詳細な分析はこれからのようだが、人口が1300万超の東京都よりも約886万人とずっと少ない大阪府の方が、街頭犯罪が多いのはなぜだろうか。路上強盗は13年連続、オートバイ盗に至っては31年連続ワースト1位という報道もある。府青少年・地域安全室治安対策課に聞くと、「根本的な原因は何なのか、明確に示せるものはありません」と困惑気味だ。
過去には、理由の分析を試みたケースがあった。「週刊ポスト」2011年6月10日号で、犯罪社会学が専門の小宮信夫・立正大学教授が「街のつくり」に言及した。大阪の場合、街路が碁盤の目状なのでどこからでも標的に近づきやすく、また逃げやすい。さらに東京と比べてガードレールの設置が少ないため、「歩行者に車両が近づきやすく、ひったくり犯が活動しやすい」と述べていた。
府も手をこまぬいているわけではない。例えば府内の市町村が監視カメラを設置する際、経費の半額を補助している。2011年度には街頭犯罪の多発地域を中心に、30市町に1759台増やした。また「ハード面だけでなく、ソフト面も充実させるため、ボランティアによる防犯活動を活性化させる施策も打っています」(青少年・地域安全室治安対策課)。活動の中心拠点となる「地域安全センター」を小学校の教室や公民館などに置き、子どもたちが通う学校と地域、行政が一体となって防犯を強化しているという。
確かに、街頭犯罪の件数減少はこうした取り組みの成果と考えられる。それでもワーストワンという現実を突き付けられ、こと自転車盗は昨年比で大幅増だ。青少年・地域安全室治安対策課の担当者も「うーん、なぜでしょうか」と首をひねる。
殺人や強盗など重要犯罪の認知件数でも全国一
街頭犯罪だけではない。警察庁が毎年公表している「犯罪統計」を見ると、大阪は殺人や強盗、放火を含む重要犯罪の認知件数でも全国で最も多いのだ。2012年は2285件で、東京の1867件を上回る。2013年のデータは1~11月までだが、これも2173件で東京よりも多い。
検挙率の低さも気になる。2012年の全国の検挙率は65.8%だった。これに対して大阪は45.6%にとどまる。2013年1~11月は44.9%とさらに下がった。
振り込め詐欺も多い。大阪府警によると、振り込め詐欺と、異性紹介など類似の詐欺を合わせた2013年の認知件数は1110件で、前年比で倍増となった。
数字を追う限り、大阪は治安面で不安がぬぐえない。しかも府民の安全を確保する立場の大阪府警が、誤認逮捕を繰り返している。2014年1月9日には、鶴見署が、女性の申告に基づいて20代男性を監禁と窃盗の容疑で逮捕したが、その後女性が虚偽を申し立てていたと認めたため約4時間後に釈放していた。同署の喜田真司副署長は「今後、このようなことがないよう適正捜査に努め、再発防止に全力を尽くす」とのコメントを出した。
これで府警は、半年間で7件の誤認逮捕を出したことになる。例えば2013年4月、北堺署が窃盗容疑で40代の男性を逮捕した。ガソリンスタンドで、盗まれた給油カードが使われた様子が防犯カメラに映っていたというものだったが、実際はこの男性は事件と無関係だったことが分かった。男性は釈放されたものの、勾留は85日間にも及んだ。8月には、女性が「あの男性に尻を触られた」と証言した内容に基づいて、浪速署の署員が50代男性を痴漢容疑で逮捕。ところが防犯カメラを確認したところ別人の犯行と分かり、同日釈放、謝罪した。
府警では、年初に開かれた警察署長会議で田中法昌本部長が裏付け捜査の徹底を指示したばかりだったという。この1年で「ワースト1位」の汚名返上が命題だが、滑り出しでつまずいた格好だ。