日本のロケット打ち上げを巡って明るいニュースが続いている。2013年8月~9月、大型のH2Bロケットと、小型ロケット「イプシロン」が相次いで打ち上げられた。H2Bは打ち上げ業務が宇宙航空研究開発機構(JAXA)から三菱重工業に移管されて初めての打ち上げを無事済ませ、イプシロンは新開発ロケットの初の打ち上げを成功させ、日本の技術力を示した。
今年からはH2A、H2Bの後継ロケットの開発も始まる。ただ、日の丸ロケットの未来は順風満帆というわけではない。厳しい国際競争の中で、コストをいかに引き下げるかなど、生き残りへの課題は小さくない。
割高な打ち上げ費用
H2ロケットの改良型として1996年から開発が始まったH2Aロケットは最大で衛星10トンまでを打ち上げられ、2001年の試験機(1号機)からこれまで22回打ち上げ、21回成功(成功率95.5%)。同じエンジンを使用するH2Bの4回を加えると26回中25回成功させている(同96.15%)。今年も5回程度の打ち上げが見込まれる。
問題はコストだ。1回の打ち上げ費用は85億~120億円で、アリアンスペース(欧州)などの約80億円に比べて割高。さらに、半額程度の格安に挑む米ベンチャーもあるし、インド勢などの新興国の参入も見込まれる。
そこで、政府の宇宙政策委員会は2013年5月、H2A後継の大型ロケット、通称H3ロケットの開発方針を打ち出した。2020年の運用開始を目指し、開発費1900億円を投じる計画で、2014年度予算で早速、70億円が盛り込まれた。打ち上げ費用50億円とH2Aから半減が目標だ。
他方、イプシロンは、2006年を最後に引退したM5ロケットの後継機にあたり、技術的には、H2Aや各国のロケットは液体燃料が主流の中で、日本のロケット開発の父といわれる糸川英夫博士以来蓄積してきた日本独自の固体燃料技術を継承している。
衛星1.2トンまで打ち上げられるので、H2Aよりかなり小ぶり。M5が打ち上げ費用の高さからお役御免になっただけに、イプシロンはコスト削減を大きな課題に開発された。
部品を減らして組み立て時間を短縮したほか、H2Aの補助ロケットをイプシロンの1段目に転用し、2・3段目にはM5のエンジンを改良して使うなど既存技術も活用、さらにITを駆使してロケットに積み込んだ人工知能が打ち上げ前の点検を自動的にすることで大幅に省力化するなどにより、打ち上げ費用はM5の80億円から38億円へ半減を実現した。さらに2017年ごろには同クラスの世界の"相場"である30億円以下にするのが目標だ。