「手すりにおつかまりください」ステッカーで歩行者減少
危険なエスカレーター歩行だが、鉄道各社の利用者への呼びかけ状況はどうなっているのか。
事故があった武蔵小杉駅に乗り入れているJR東日本では、鉄道会社など計32社と共同で定期的に実施している「エスカレーター『みんなで手すりにつかまろう』キャンペーン」のポスターを、各駅の判断でキャンペーン期間終了後も掲示したり、駅が独自で作ったポスターを掲示したりしている。ただ立ち止まっての利用を強制はしておらず、今後呼びかけを強めていくという考えも現時点ではないとのことだ。
名古屋市営地下鉄は、04年7月から全国でいちはやく「歩行禁止」を呼びかけているが、歩行者はあまり減っていないのが現状だという。ただ、以前は「右側を空けるのが当たり前」と考える利用客が多く、右側に立っている人に対し「どけ」「邪魔だ」と怒鳴るような人もいたが、呼びかけを始めたことで、右側に人が立っていても「急いでいる自分が通してもらう立場だ」と遠慮するようになった、という意識改革があったようだ。これまではエスカレーターの側壁にポスターを掲示していたが、より見やすいように天井からぶら下げるなど、掲示方法の改善を行っている。
07年秋から呼びかけを始めた横浜市営地下鉄でも、やはり歩行者はあまり減っていないようだ。エスカレーターの側壁の張り紙や駅構内の放送などで、「マナーを守るようお願い」を続けていくとのことだ。
東京メトロでは「みんなで手すりにつかまろう」キャンペーンに参加しているほか、一部の駅で、高低差が10メートル以上ある改札内のエスカレーターと動く歩道の手すりに「手すりにおつかまりください」と書かれたステッカーを貼っている。12年3月にエスカレーター4基でこのステッカーを試験的に導入したところ、歩行率が52%から20%に減少したと公表している。
都営地下鉄では各駅に「エスカレーター内の歩行は、思わぬ事故のもとになりますのでご注意いただきますようお願いいたします」というポスターを掲示しているが、公式サイトでは「最終的にはマナーの問題ですのでお客様のご理解とご協力をお願いいたします」と書かれている。各社対応に苦慮しているというのが実態のようだ。